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トライアングル47

「あ。そこで拓斗さん、謝っちゃダメだよ。俺、バカだからね、また調子に乗るよ?自分で言うのもなんだけど」 紘海はクスクス笑って 「兄貴から、あんた…じゃないや、拓斗さんのこと、いろいろ聞かされてたから。俺、すごく親しい人みたいに勝手に感じてた。俺の方こそ、ごめんなさい、です」 紘海はそう言ってぺこんっと頭を下げると、キッチンスペースの方に行ってしまった。 「ね。悪いヤツじゃないんだ、あいつは」 翡翠を抱きながら修平が歩み寄ってくる。 拓斗は黙って頷いた。 「朝飯食ったら、帰ろう、拓斗。研修の準備しないとね」 相変わらず、賑やかにお喋りする紘海と食卓を囲んだ後、2階に行って荷物をまとめて帰る準備をした。 1階に降りると、それまでソファーで寛いでいた翡翠が大きく伸びをしてからトコトコと近づいてくる。 「なーん…」 下から見上げる翡翠の丸い目は、何か言いたげだ。自分たちが帰ってしまうのを、雰囲気で察したのかもしれない。 拓斗は翡翠を抱き上げた。 「ごめんね、翡翠。俺、明日から東京に出張だから。おまえを連れて行けないんだ」 「にゃ~……」 拓斗が話しかけると、翡翠は小さく返事をした。 「紘海さんにおまえのこと、任せたからね。迎えに来るまでおりこうさんに待ってて」 頭を撫でながら言い聞かせると、翡翠は返事をせずに黙ってこちらを見つめた。 置いていくのは自分なのに、なんだかすごく別れがたくて、目がじわじわしてきた。 「にゃ~ん」 ひと声鳴いて前脚をもぞもぞする翡翠に、顔を近づけると、ぺろぺろと頬を舐めてくる。大丈夫だから泣くなと、励まされてるみたいだ。 拓斗は翡翠に頬擦りしてから、きゅっと顔を歪めて微笑み 「必ず迎えに来るからね」 自分に言い聞かせるように呟いて、翡翠をそっと床におろした。 翡翠を抱っこした紘海に店の玄関ドアまで見送られて、修平と2人で駐車場に向かう。車に乗り込むと、鼻をぐすぐすさせている自分に、修平が手を伸ばしてきた。手の甲に手のひらを重ねてきて 「ちょっとの間だけお別れだ。研修が終わって戻ったら、すぐに迎えに来るよ」 「うん……」 「翡翠の方が大人だな。ずっとあなたのこと、心配そうに見つめてた」 苦笑する修平の顔をちらっと見て、拓斗は浮かんできた涙を左手で拭った。 「さ、行こう。5日分の下着とか、洗面用具とか、買い足すものあるでしょ?途中で店に寄るからね」 修平は手をぽんぽんっと優しく叩くと、ハンドルを握り、車を発進させた。

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