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トライアングル48

「そんなに買い足すものないって言ったわりに、あなた、結構買うよね」 修平が買い物カートを覗き込みながら、クスクス笑ってる。 山形からの帰り道、郊外のショッピングモールに寄って買い物をすることにした。そこには、お気に入りのアメカジ系のファストファッションブランドと、綺麗め系のメンズファッションブランドの店がテナントで入っている。 拓斗は、下着と寝巻替わりの安めのTシャツを何枚か買った後で、仕事に必要なワイシャツとネクタイを見に行った。修平の言う通り、カートの中は思いの外、大きな袋でいっぱいだ。 「そんな笑わなくてもいいじゃん。最近買い物してなくて、思ったより必要なものあっただけ。修平の方はこれだけでいいの?」 修平に揶揄われて、拓斗はぷっと頬をふくらませた。 「うん。後は旅行用の洗面用具かな。あなた、それ買ったら、MUJIの方にも行ってみよう。あそこなら細々したもの、一気に揃うし」 機嫌が良さそうな修平を横目でちらっと見て、拓斗はそっと頬をゆるませた。 別れ話が出る数ヶ月前から、修平とこんな風に買い物をすることもなくなっていたのだ。付き合い始めには、よくここにも来ていたのに。 ちょっと前の楽しかった日々に、時間が逆戻りしたような気分だ。 「ところで……旅行鞄はあるの?あなた」 シャツとネクタイの会計を済ませて戻ると、修平に問いかけられた。 「あ……。えーと…学生時代に使ってたデイバッグの大きいやつならあるけど」 修平は首を傾げて 「本社研修。たぶん、最初の3日間の後で埼玉の工場の方に移動するよ。泊まる寮も変わるから、荷物は持ち歩くことになるな」 「え……そうなんだ?」 「うん。スケジュール表、渡されたでしょ。本社工場って、あれ、埼玉の包装事業部の見学も含まれてるから。5日間だとスーツは着っぱなしで1着でいいけど、荷物、それなりの量になるよね。ホテルじゃないからクリーニングも出せないし」 拓斗はカートの袋を見下ろして、考え込んだ。 そうすると、シャツも下着も5日間分きっちり必要だ。研修途中でみんなと電車で移動する、となると、あのデイバッグでは荷物が入り切らないかもしれない。 「そっか……。じゃあ、小さめのキャリーケースがあった方がいいかな」 「そうだね。その方が動きやすいし」 「じゃ、カバン屋も見る」 たしかさっき通り過ぎたはずだと、カートを押して歩き始めると、修平に腕を掴まれた。 「俺の、貸そうか?」 「え?」 「キャリーバッグなら2台持ってる。デザインこだわらないなら、貸してあげるよ」

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