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トライアングル49
「いいの?」
「いいよ。俺が持ってく予定のよりちょっと小ぶりなやつだけど。5日間ならコンパクトにまとめれば入ると思う」
修平はにっこり微笑んだ。
「ありがとう。すごく助かる」
「キャリーバッグはこれからも出張で必要になるから、店で慌てて選ばない方がいい。後でじっくりネットで調べて買った方が、種類もあるし安く手に入る」
「うん」
「MUJIで買い物したら、どっかでお茶しようか。昼飯にはまだ早いし」
修平はそう言うと、先に歩き出した。
拓斗はその後ろ姿を見ながら慌ててカートを押して後を追う。
……なんか……デートって感じ、する……。
つい、そんなことを考えて、口元がゆるんでしまう。
……や、デートじゃなくて、必要なものを買いに来てるだけだし。
慌てて否定してみるが、自然と足取りがふわふわしてしまう。
……はぁ……。俺って、単純……。
「何ひとりで変な顔してるの?選ばないの?」
いつの間にかMUJIの前に来ていた。
拓斗は慌てて表情を引き締めると
「あ、うん」
修平が見ている棚の前に向かった。
買い物を済ませ、フードコート近くのコーヒーショップに入った。それぞれ好きなドリンクをオーダーして拓斗が財布を取り出すと、修平に手で押さえられた。
「いい。後で」
「あ……うん……」
ドリンクの乗ったトレーを持ち、修平が先に席へと向かう。奥の広めのソファー席に荷物を置くと
「貸して。そっちも奥に置いちゃおう」
コーヒーショップに入る前にカートから降ろして両肩で担いでいた拓斗の荷物を、ひょいっと外して奥のソファー席に置いた。
「くく…。すごい荷物だな」
2人の買い物袋だけで、2人分のソファーを占領している。
修平は楽しげに笑うと、先に手前の椅子に腰を降ろして、隣に座れと指し示す。
……わ……。
4人掛けのテーブルに横に並んで座れだなんて、人目を気にする修平にしては珍しい。荷物があるから仕方なくだと分かっているが、ちょっとドギマギしてしまう。
拓斗は周りをちらちら見ながら、ストンっと腰をおろした。
「あなた、顔が赤い」
拓斗がハッとして隣を見ると、修平は苦笑していた。
「や。……え、そんなこと、ない」
指摘された頬を手の甲で擦ると、修平は肩をこちらの腕にぶつけてきて
「ちょっとデートっぽいね」
小さな声で囁いた。
ドキンっとする。忍び笑いをした修平の手が、伸びてきて太ももの上に置かれた。
ビックリして思わず声が出そうになって、拓斗は慌てて手で口を押さえる。
太ももに置かれた彼の手が、さわさわと動いた。店の一番奥で他の客に背を向け壁を向いて座っているから、誰にも見られないとは思う。でもこんな場所でそんな大胆なことを、修平がするなんて。
「……修平、ちょっと、」
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