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トライアングル50

「ん?どうした?」 修平はうっすらと微笑んで首を傾げる。その手は、自分の太ももをゆっくりと撫で回しているのだ。 拓斗は頬が熱くなるのを感じながら、目だけ動かして周りの様子を窺うと 「だめ。手、」 「だめ……?」 「だって、誰かに見られ」 「見えないよ、誰にも」 そう言われてしまっては、反論できない。 たしかにこの席は死角になっているから、わざわざ見るつもりで覗き込んで来ない限り、誰にも修平の悪戯は見えないのだ。 でも……。 実際に見られるかどうかの問題じゃなく、そういう危うい状況で、修平の手がそんな場所を撫でているのが問題なわけで……。 薄い布地越しに、修平の手のぬくもりが伝わってくる。ただ膝の上を撫でていた手が、少しづつ範囲を広げて、太ももの内側を掠め始めた。 「……っ、ね、……だめ」 「ダメかな?」 修平は素知らぬ顔で、空いてる方の手でトレーの上のコーヒーカップを持ち上げた。 「ここのコーヒー。チェーン店だけど味がすごく俺好み。香りもいいよね」 独り言のように呟いて、コーヒーをひと口啜った。 拓斗はコーヒーどころではない。 修平の指が内ももの奥の方へと忍び込んでいく。普段、人に触れられることのないそこは、皮膚が薄くて刺激に敏感だ。そんな風に修平の少し節くれだった細い指で触られたら、ゾワゾワしてくる。 修平は内ももを強めに擦ると、今度は膝の上辺りを優しく撫で回した。 ……っ。 ダメだ。ちょっと変なスイッチが入ってしまった。撫でられても擽ったいだけだったそこまで、意味ありげな感じ方になってきた。 拓斗はもじもじと、太ももを捩り合わせ、悪戯する修平の手を、ぎゅっと掴んだ。 「修平。ダメだってば、ほんとに」 囁く声が、掠れてしまう。 「どうして?あなたが好きだから、触ってるだけだよ」 「…っ」 言葉を失い、拓斗は横目で修平の顔を窺った。 あなたが好きだから。 それはどういう意味だろう。 自分のことが好きだと言ってくれているのだろうか。それとも、あなたはそういうことをされるのが好きでしょう?と言われているのか。 混乱してくる。身体の奥の熱が、また上がってきた気がする。 捩り合わせた内ももに、修平の指先が潜り込んできた。抵抗はするなとでもいうように、合わせた内ももをこじ開けるように。 拓斗は思わず、足の力をゆるめた。 抵抗を失って、手がず…っと沈み込む。 その指先が角度を変えて、際どい方向に動いた。 「……っあ、」 ビクッと震えた。布地に包まれたソコに、修平の指先が触れてしまった。 「ダメだよ。あなた。変な動きしちゃ。他の人に、気づかれちゃうからね」

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