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トライアングル51

分かってる。言われなくてもそんなこと。 でも、無理だ。今ので余計にスイッチが入ってしまって……。 修平は指での悪戯をやめてくれない。 拓斗は、微かに吐息を吐き出し、そっぽを向いて気を散らした。 太ももの上を、修平の人差し指が円を描くようにしてなぞっていく。ぞくっ…ぞくっ…っと甘く痺れて、その度に股間がきゅ…っとなる。また脚の間に忍び込んだ指が、わざとみたいに柔らかい膨らみを掠めていった。 「……っぅ」 拓斗は掴み締めた修平の手首を、ぐいっと引き剥がした。これ以上は本当に、ダメだ。 「…しゅ、へ。いや…だ」 横目で彼を睨む。修平は小さく吐息で笑うと 「わかった。また、後でね」 囁いて、ようやく手を離してくれた。 何事もなかったかのように、修平はコーヒーをひと口啜る。 拓斗もほっとして、氷が少し溶けかけたアイスコーヒーのグラスを掴んだ。 手が震える。喉がカラカラだ。 ストローを使わずに、グラスから直接あおった。 「紘海に……キスとかされた?」 平然と目の前の壁を見つめながら、修平が呟いた。一瞬、何を言われたのか分からなくて、拓斗はグラスをテーブルに置いて、修平の横顔を見つめた。 「……え……?」 「キス以上のことも、された?」 ようやく質問の意味が理解出来た。 拓斗は慌てて首を横に振る。 「そんなこと、全然、」 「……そう。あいつは油断も隙もないな。2人きりにして、ごめん」 修平は無表情のまま、壁を見つめている。 でも、昨夜のことを気にしてくれていたのは、嬉しかった。 「ううん。大丈夫。何も、なかったから」 拓斗がそっと答えると、修平はちらっとこっちを見て微笑んでくれた。 コーヒーショップを出て、また店内を見て回る。 さっき変な所を刺激されたせいで、トイレに行きたくなってきた。 「修平。ちょっと待ってて。俺、洗面所に……」 「ああ。俺も行くよ」 すかさず遮られて、荷物を持っている方の手をぎゅっと握られた。 ……え……? ビックリしていると、そのまま先を行く修平に引っ張っていかれた。 手を繋いだままで、修平はどんどん歩いて行く。こんな人のいる場所で、デートの時だって手なんか繋いだことはなかった。 信じられなくて、頭がぼーっとしてしまう。 すぐ近くの洗面所には向かわずに、修平は何故かエスカレーターに乗った。相変わらず手は繋いだままだ。 ……どこに……行くんだろう……。 拓斗はのぼせた気分のままで、そっと周囲を窺った。すぐ後ろにも人がいる。荷物が多いとはいっても、手を繋いでいるのは見えているはずだ。 ……修平……?

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