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戸惑い揺れる揺らされている1
「……ここ?」
「うん、降りて」
拓斗は車から降りると、小さな駐車場とその脇にある素朴だがいい雰囲気の建物をきょろきょろと見回した。
道路沿いから見えた木製の看板には、Cafe&工房とだけ素っ気なく書かれていた。
「喫茶店……」
「うん。珈琲専門店。おいで」
修平が微笑みながら手招きをする。拓斗はちょっとドキドキしながら修平に歩み寄った。さり気なく腰に回される手に、思わずビクッとなる。
「まだ薬、抜けない?」
拓斗は頬がカッと熱くなるのを感じながら、急いで首を横に振った。
「そうじゃ、なくて」
「ここのマスター。俺が同性と付き合ってるの、知ってる人」
拓斗はぱちぱちと瞬きした。修平はなんだか楽しそうに笑っている。
「珈琲……飲むの?ここで」
「俺はね。あなた、飲まないならケーキでも食べたらいい。奢ってあげる」
質問を軽くはぐらかされてる。拓斗は黙って修平に寄り添い、店の入り口に向かった。
「おお。いらっしゃい」
ドアを開けて店内に入ると、大柄で優しそうな笑みを浮かべた初老の男性がカウンターのスツールから立ち上がった。
「こんにちは、牧さん。……あれ?まだ営業してますよね?」
修平の言葉に牧と呼ばれた男性は、顔に皺を寄せて笑って
「客がひけたんで休憩してただけだ。それより随分ご無沙汰だったじゃないか」
「すみません。このところ、仕事が忙しくて」
修平が苦笑する。拓斗は思わずちらっと修平の横顔を確認してしまった。修平のこんな朗らかな、どこか甘えたような声音を聞いたことがない。
「仕事が忙しいのは何よりだな。そうだ。器の新作、いくつかあがってるぜ。見て行くか?」
牧はそう言って、親指をくいくいっと後ろに向ける。
「いや。今日はそんなに時間ないんで。今度こいつ連れて、工房の方にお邪魔しますよ」
牧はエプロンをつけ直しながら、カウンターの中に入って行った。
「そうか。予定空いてるんなら再来週の土日に窯の方に来てくれ。人集めてちょっと大きなイベントやるからな」
牧は丁寧に手を洗うと、カウンター越しにこちらを見て
「で。その綺麗なお連れさんは、前に言ってたおまえさんの、いい人かい?」
真っ直ぐに視線を向けられて、拓斗は慌てて表情を引き締めた。修平のいつになく砕けた様子と牧とのやり取りに、思わずぼんやり見とれていたのだ。
修平の腕が伸びてきて、グイッと肩を抱かれた。
「ええ。俺のいい人です。愛想つかされてたんですけど、またよりを戻せたんで」
修平の言葉にドキッとする。
牧はにっこり笑って頷くと
「そりゃあよかった。俺は牧宏典だ。よろしくな」
「あ……あの、深月拓斗です。初めまして」
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