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戸惑い揺れる揺らされている6
「っ、焼きもちなんか、…別に、俺は、」
図星を指されて、頬がカッと熱くなる。修平の不思議そうな視線が痛い。
「……意外。あなたも、妬いたりするのか」
修平は呟くと、膝の上に置いた手で太腿をさわさわと撫でてきて
「俺は歳上には興味ないよ。あの人、若く見えるけど俺より10歳ぐらい上だ」
「えっ?」
拓斗は驚いて、修平の顔を見つめた。
「30超えてるように見えないでしょ?」
こくこくと頷いて、ガラス越しにカウンターの樹に視線を向ける。
「俺と、同じぐらいかと、思った」
「華奢だしちょっと浮世離れした美人だしな。俺も初めて会った時、歳を聞いて驚いた」
拓斗は修平の方に視線を戻し、恥ずかしくなって俯いた。
バカみたいだ。修平がちょっと優しい声で話したぐらいで、妬くなんて。
「あの人の恋人は、お兄さん」
「え……?」
「建築家の。さっき言ったでしょ。お兄さんがいるって」
「そんなことまで話したの?工房でって、修平、陶芸なんかやってたんだ」
修平は首を傾げながら、太腿をぎゅっと掴んできて
「前に話さなかった?月に1、2回教室に通ってるって。あなたがアパートに来た時も、何回かバイクで出掛けたことあったよね」
「あ……」
それなら覚えてる。付き合っている時に何度かそういうことがあった。
今日は空いてる?と電話で確認してから修平のアパートを訪ねたのに、「これからちょっと用事があるから、ここで待ってて」
そう言われて、部屋にポツンと置き去りにされた。
何もすることがないまま、1人で修平の部屋で過ごしている間中、もやもやしていたのだ。都合が悪いなら来なかったのに、どうしてそう言ってくれないのだろう…と。
修平は時々、そういう意味不明な行動をする。
自分は歓迎されてない。本当は会いたくなかったのに、自分がしつこくし過ぎてるんじゃないか。修平はもう自分に飽きていて、いやいや付き合ってくれているだけなのだろうか。
そんなことがある度に、不安と不満が心の中で燻っていた。
だからあの日、一気に爆発したのだ。
そんなことはないよと、否定して欲しかった。
拓斗は、自分の太腿を撫でている修平の、少し筋張った手をじっと見つめた。
別れた時の辛い気持ちがよみがえってきて、暗い気分になる。
さっきまで、ふあふあと地に足が付かないような幸福感に浸っていたのに。
「……陶芸教室、だったんだ」
「うん。他にもね」
拓斗はバッと顔をあげた。
「ねえ、修平。あの頃、俺のこと、少し鬱陶しいって、思ってた?」
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