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戸惑い揺れる揺らされている14

「あなたは俺のこと、どういう人間って思ってるのか分からないけど……」 そう言って修平はいったん口をつぐみ、少し遠くを見るような目をして 「俺は俺なりに、いろいろ考えてるよ。悩んだりも……してるかな。彼らと陶芸教室でたまたま会って、ちょっと話す機会があった時にね、樹さんが俺に言った言葉が何だかすごく引っかかってね」 淡々と独り言のように話し続ける修平の横顔を、拓斗は内心はらはらしながら見ていた。 修平は、普段あまり自分語りをしない人だ。 余計な詮索をしてしまったせいで、実は怒っているんじゃないかと思ってしまう。 修平の横顔も口調も、何も教えてはくれないけれど。 「かなりイラッとして、柄にもなく突っかかっていったんだよね」 修平はそう言って、くすっと思い出し笑いをする。 「え……。修平が?樹さんに?」 ビックリして聞き返してしまった。 あの穏やかで優しげな樹が、修平を苛立たせるようなことを言ったのも信じられないし、修平が感情を剥き出しにして突っかかっていく姿も想像がつかない。 「そ。大人げなかったな、あの時の俺は。たぶん……初対面でいきなり図星を指されたからだろうな」 「……そう……なんだ……」 どんな話だったのだろう。 たまに、感情があるのだろうかと思ってしまうほど、心の内を表に出すことが少ない修平が、図星を指されてムキになってしまう言葉。 その内容が、ものすごく知りたくなる。 そして同時に、修平の気持ちを揺さぶるような言葉を投げつけることの出来た樹が、すごく羨ましくなった。 自分は修平の内面を、多分そこまで理解出来ていない。誰よりも一番側にいた恋人だったのに。いつも、修平が自分にする言動を受け止めかねてはオロオロしてしまって、乱高下する自分の感情に振り回されてしまっていただけだ。 もっと修平のことを知りたい。 心を開いて欲しい。 出逢ったばかりの頃は、もうちょっと修平は近かった気がするのだ。もっと自分に本音を見せてくれていたと思う。 付き合えば付き合うほど、修平はこちらに見えない壁を作り始めた。今振り返ってみれば、分かる。でもあの頃は、恋に浮き足立っている自分の気持ちでいっぱいいっぱいで、そういう2人の関係性すら見えていなかった。 1度別れて冷却期間を置いたことで、見えてきたものがある。 自分はもう一度、やり直すチャンスを得たのだ。だったら2度と同じ失敗は繰り返したくない。 「ね、修平。あの……あのね。樹さんとどんな話、したの?」

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