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──キス!? なんで!?
その言葉に唖然としていると、片谷がにこっと微笑む。
「もしかして、したことないんですか?」
その言葉は明らかに揶揄が含まれていて、馬鹿にされているのではないかと思う。
だがここで嘘をついてもしょうがないので正直に言う。
「……キスはしたことありません……でも、経験はあります」
「……え」
「キスは……しない主義ですから」
中三の頃に見事童貞を卒業した。だがキスだけはどうしてもしたくなくて、必死に防いでいた記憶がある。
これでもそれなりに経験しているのだ。
「そうなんですね……唾液が嫌?」
「……そういうんじゃ」
「……俺の唾液は?」
包み隠さず聞いてくる。もう少し躊躇って欲しいとも思うのだが、どうだろう。
片谷の唾液か。汚そうな感じはしない。これも試すしかないのだろうか。
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