なんだ、どういうことだ？ くちびるを手で拭おうとして、やめる。こんなことをしても片谷のことを傷つけるだけだろうから。 「じゃあ、今日から一ヶ月間……三十日ですね。それまでは彼氏（仮）として、よろしくお願いします」 そう言いながら、片谷に手の甲を取られてキスをされた。しかも、ちゅっと音を立てて。 この男に高校生活をかき乱されそうな予感は外れて欲しかったのだが当たってしまったようだ。 まあ、要するにこの男を好きにならなければいい話なのだ。 「────会うの、今日が初めてじゃないんだけどな……」 それまではこの遊びにつき合ってやろう。