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「……まあ、一応君に拒否権があるのも否定はしない。家柄も申し分ないしな。社長は元気か」
「それなりに。今はアメリカにいるのでよくわかりませんけど、連絡する限りは体調よさそうでした」
──ん? 社長?
え、待て。どういう意味だ?
ファイルを近くのテーブルに置いて自身のパソコンを起動させる。これも生徒の情報が細かく載っているものだ。
片谷の欄を見てみると、片谷財閥との文字が。
「……金持ちかよ……」
更に詳しく調べてみると、宇月の家のところとも交流があることがわかった。
総資産は常人の忍にはわけわからない額で、眩暈がしそうだ。
「君が拒否するなら仕方ない。……だが、諦めたわけではないからな」
「わかりました。これだけですか?」
「ああ。帰っていい」
片谷がバッグを手にして立ち上がり、忍の顔を見ることなく生徒会室を出ていった。
なにかされるかも、と思っていたがなにもないことにほっと安心してパソコンの電源を切る。
「……会長、なんで片谷くんを推薦しようとしたの?」
「……生徒会を任せてもよさそうな気がしたからな。でも、本人の意思がないとこの学校は崩れてしまう」
「それは否定しませんね。結局のところ、次の生徒会長となるのは今の二年生の内の誰かですけど」
篠田がテーブルの上に置かれた入れものを見る。
まだ湯気を立てるお茶は少しも減っていなかった。
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