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「じゃあ、俺帰ります」 「さようなら」 他の人間より早く帰るのが忍のいつもの行動だった。少しでも空いた時間に勉強しなければあっという間に置いていかれてしまうからだ。 生徒会室の扉を開けたら、そこには何故か片谷の姿が。 壁にもたれかかり、撮影されているかのように自然に。 「……なんで」 「待ってたんです」 気の所為だろうか。片谷の声に棘があるような気がする。 そのまま手首を引っ張られ、無理やり歩かされた。反抗しようとも思わず、されるがまま。 「……片谷」 「ああ、下の名前では呼んでくれませんか」 「別に……二人のときまで下の名前呼ぶ必要ないだろ。それより、どうして断った? チャンスだろ」 「……」 片谷が止まる。忍の目をじっと見つめられ、どうしてわからないのかと責められているようだ。 驚いた。こうして負の感情を出さないと思っていたから。 「生徒会室に入るまでは別にいいと思ってました。……けど」 「けど……なに」 「俺、毎日毎日忍先輩がああやってちょっかいかけられてるところ見ると、嫉妬で気が狂いそうです」 「……は?」 「抱きしめられてたじゃないですか……それなのに、忍先輩は別に拒否していませんでしたし。忍先輩のことをむやみに傷つけたくもないし」 「……」 「どうしてわからないんですか? 嫉妬したんです」 「……しっと」 「せめて俺が見ていないところでしてください……」

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