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「……片谷」
「ん? なんですか、先輩」
「俺のこと……馬鹿にしてる?」
「してませんよ。ただ、かわいいなあと」
男に使う形容詞ではない。
いい加減離れてほしいのだが、腕を掴まれたまま離してくれる気配が一切ない。
顔が整いすぎていて傷一つ見当たらないし、目は大きくくっきりとした二重がよりイケメンに仕立てている。
こんなかっこいい人間が、こんな目の前にいるなんて。
ああもう、心拍数も上がってきた。
「そろそろ離れてくれないか……」
「あ、はい。ごめんなさい」
「……やけに素直だな」
「嫌われたくないので」
「よく言う」
乱れた前髪を整え、頬を両手で包む。
ていうか、ここ生徒会室の真ん前だ。会話を聞かれていることはないだろうが、こんなところでなにをやっていたのか。
「……行くか」
「はいっ」
そう声をかけると、片谷が嬉しそうにはにかんで頷いた。
なんだろう。小さい子どもを引き連れている気分だ。
まっすぐ昇降口まで向かい、靴を脱ごうとすると声をかけられた。
「あ、あの……忍さん」
「はい?」
ネコ系男子だ。しかも集団の。
忍に声をかけてくるなんて、何の用だ?
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