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またいつものように言い合いをしていると、この会話の内容を知らない他の生徒がざわつきはじめた。
恐らく、少し顔を近づけて話しているから興奮する男子は興奮してしまうのだろう。
入学当初は嫌で嫌でしょうがなかったが、もうこの様子は慣れた。
ふと、体育館に入ってきた晟と目が合う。忍の隣に宇月がいることに気づき、なにかを察したように苦笑された。
「……ちっ」
「おい、なんで今舌打ちしたんだよ」
あ、聞こえていたか。
宇月の問いかけは無視し、改めて文面を見直す。およそ数十行。時間にしてみればたったの数分。
緊張する必要は全くないのだが、片谷が見ていると思うと急に緊張してきてしまう。
隅から隅まで見られようとしているからか。
心を見透かされているからか。
はたまた────
『新入生、入場です』
急なそのアナウンスに驚き、つい身体を跳ねさせてしまった。今日の司会進行は篠田だ。柔らかい声と同時に吹奏楽部の演奏が始まる。
一年生が入ってきた。まずはSクラスからなのだが、当然片谷はそこにいて。
──……あ。
見つけてしまった。五列目に片谷がいる。
やはり纏っているオーラが違うというか、風格が違うというか。
キラキラして、輝いているように見えた。
忍は不思議と片谷から目が離せなくなり、瞬きをすることすら忘れてしまった。
宇月に話しかけられ、ようやく肩を揺すられていたことに気づく。
「……おい。聞こえてるか」
「っ……なにが、ですか」
「初めの言葉のあとにはすぐおまえが出るんだからな。堂々としてこいよ」
「言われなくてもわかってます」
「どうだか」
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