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そこで会話は終わり、一年生が入場し終えるのを見守る。小柄な男子生徒はやはり人気があるのか、男子たちがざわついた。 全員が整列し、座ったところで吹奏楽部の演奏が終わり、いよいよ始まる。 全員が真ん中を向いているため、体育館の中心で挨拶する必要がある。後ろ姿も見られるということだ。 とうとう初めの言葉が終わり、忍の番となる。 『歓迎の挨拶、大宮忍』 忍の名が呼ばれた瞬間、一年生が反応した。顔を見合わせたり、目を見開いたりと反応は様々だ。 背筋を伸ばし、小さく息を吐いたところでマイクがある場所へと歩いていった。 一礼し、マイクの電源が入っていることを確認してから口を開いた。 『こんにちは。一年生のみなさん。ようこそ、この高校へ』 マイクを通した、柔らかくてどこか色気がある声が体育館中に響き渡る。 ああ、この感覚。 苦手とする者もいるし、これを好む者もいるがどちらかと言うと忍は後者だった。 『ここは全寮制の男子高校です。寮生活が始まり、まだまだ慣れないことも多いかもしれません』 ここで一年生全員を見渡してみる。 一人も下を向いている生徒はいなくて、全員が忍のことを見ていると思うとなんとも不思議な、言い表せない気持ちになった。 『ですが、心配する必要は一切ありません。この高校での生活を、目一杯楽しんでくださいね』 ここで、にこっと笑ってみせる。すると多くの生徒が忍に夢中になっているように見えた。 ふと、そのざわついた生徒に囲まれた中心にいる男子に──まるでピントが合ったように──目がいってしまう。 そこには優しげな顔をした片谷がいて、ばちっと目が合ってしまった。 やっぱり、この男は本当に顔が整っている。

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