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「あ……なるほどね。それなら俺らが向かう必要なかったのか」 「よく気づいたな、忍」 二人にそう言われ、つい肩を竦める。 しかし、その目線は片谷の方へ向いていた。 『僕はミスしたんじゃありません。片谷優都くんにボールを渡すためにわざとリングに当てたのです! さあ片谷くん、華麗にシュートを決めてください!』 主将が冷や汗をかきながら必死にみんなに向かってそう言っていた。 他の生徒もそれを察したのか必死に盛り上げていた。更に、片谷も苦笑しながらドリブルをして狙いを定めている。 王子王子と言われているが、そんな王子様のスリーポイントシュートとなれば興奮しない者はいないだろう。 忍も固唾を飲んで見守る。あの状況でミスでもしたらかなりかっこ悪い。 「……片谷」 小さく。限りなく小さい声でそう呟いたはずなのに片谷は瞬時に反応し忍の方を見た。 そのまま微笑され、真緒と宇月に見つめられてしまったところで片谷が何度かドリブルをし、シュートを放った。 そのまま軌道に乗り、体育館が静寂に包まれた中。ボールがネットの中に入る音が響き渡る。 何度かその音が繰り返されたところで、この日一番の歓声に包まれた。 「……わー……あの子すごっ」 「流石だな」 真緒と宇月がそう言った。忍もつい拍手してしまう。 こんな状況の中、シュートを決めるとは思わなかった。忍だったら間違いなく外していたのに。

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