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片谷への注目が更に高まっただろうなと思っていると、片谷が忍の方を見る。
どうして、こちらを。
『見るな』
そう口だけで言うと、片谷が小さく両手を合わせて謝るジェスチャーをしてきた。
──もう……この所為でまた俺が注目されるじゃないか。
片谷の目線の先を追おうと、数多くの生徒が忍の方を見ていた。
*****
歓迎会を無事に終え、他の生徒より遅れて教室に戻るとドアの近くには多くの生徒がいた。
当然、忍目当ての。
黒いワイシャツを着た生徒ばかりだ。黒のワイシャツは一年生しか着ていないため、一年生に目をつけられてしまったのだろう。
面倒くさい。
そんな生徒たちを少しだけ無視し、教室の中に入る。
席に着いた途端、晟に話しかけられた。
「よお。あそこにいるの全員忍目当てだろ? モテる男は辛いねぇ」
「やめてくれ。もう……今日はすぐ寮に行く」
「部屋断定されないようにな?」
「努力はする」
ホームルームが終わったあとはすぐに放課後となり部活動が始まる。
今日から体験が始まるから、しばらくしたらあの一年生もいなくなるだろう。
そう願っていたのに、ある一人の人物が登場したことで更に注目を浴びることになってしまう。
「先輩!」
「……っ」
この声は。
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