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どうして片谷がここに。
しかもクラスの奴らは忍と片谷の仲を察したかのようにそそくさと準備を初めて出て行ってしまうし。
「晟……おまえは残ってくれるよな?」
「いや、俺部活行かないといけないし」
「何部だ? 今日は休ませてやるから」
「ぜってー言わねえ! サッカー部だよ!」
晟まで出て行ってしまった。あんなに教室にいたクラスメイトはものの十数秒でいなくなった。
──早く寮の部屋に行こう……
バッグに教科書をしまおうと、屈んだときだった。
「せーんぱい」
「……はっ?」
前の席に片谷が座って、忍の方を向いていた。いつの間に、ここに?
気がつくと一年生もいなくなっていて、風が木々を揺らす音しか忍の耳には届かなかった。
「……あの一年生たちは」
「俺の友人が撒いてくれました。俺が先輩好きなの知ってるから」
片谷が髪を弄った。茶色の髪が指に絡まり、重力に従って元の位置に戻っていく。
丁度橙色の夕日に照らされてキラキラと髪が透き通るように輝いている。やや茶色がかった瞳も夕日の光を受けて煌めいていた。
「……ん?」
片谷が忍の視線に気づき、忍のことを見つめ返してきた。
「や……なんでもない。てかおまえ、部活体験は」
「んー……特に入りたい部活動もないし、いいかなって。それに、忍先輩も部活入ってないみたいですし」
「俺は生徒会活動でいっぱいいっぱいだから」
すぐ寮の部屋に帰ろうと思っていたのに、なんとなくその気が失せて椅子に座った。外では生徒たちが部活に励んでいる。
しばらくの間沈黙が訪れた。喋ることもないし、この沈黙が居心地悪いとも思わない。
なんとも、毒気を抜かれるというか。
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