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「先輩」
「今度はなに」
「先輩は、ここから……窓から見える景色がどう見えますか?」
片谷にそう問われた。
ここから見える景色。どう答えればいいのか全くわからないが、とりあえず感じたままに答えてみよう。
「部活動をしてるんだなぁって思う」
「……それだけ?」
「あとは……なんだろうな。夕日が出てきてるとか、活気に溢れた声がするとか。それぐらい」
つまらなすぎただろうか。
不安になり片谷のことを見ると、何故か微笑みながら忍のことを見つめていた。
どうして。
「俺は、いろんな人がいるんだなあって思います。帰る人もいるし、部活動に励む人もいるし、ほら……頑張ってる人もいる」
「……ぁ」
言われるまで気づかなかった。
生徒たちが走っているその横に、一生懸命サッカーゴールに向かってシュートを打ち続けている男子がいる。
「気づきませんでした? 人によって見るところも見え方も違うってことなんですよ」
「……」
「あなたと俺は全く違う。……当たり前です。同じ人間ではないんだから。生まれた環境も違うし、感じ方も違う」
片谷が立ち上がり、窓に背を向けて僅かなスペースに尻を預けた。
横顔が橙色に染まる。
「だからこそ俺は知りたいって思います。あなたの感じ方も、見える景色も……全て」
「……おかしいんじゃないのか」
「好きですから。それだけ」
片谷がひねくれた忍に苛つく様子もなく、ただただ微笑んでそう言った。
不思議な人間だ。片谷優都という男は。
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