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「優都。おまえ昨日体験行った?」
「んーん、行ってない」
「なんでだよー、もしかして部活入らない気?」
「うん。とりあえずいいかなって」
目の前でカレーを食べている友人がため息を吐いた。片谷も麺を啜る。学食はそこまで美味しいというイメージではなかったが、やはり金持ち高校とだけあって美味しい。
心からこの高校に入ってよかったと思う。
「晃平 は何部に入んの?」
「サッカー部かな。面白い先輩いるし。えーと……晟先輩とかだったかな」
「……ふーん」
なるほど。晟はサッカー部なのか。
これもいつか役に立つかもな、と思い片谷は記憶した。
スープを蓮華で掬ったところで周りの生徒がざわつく。片谷もそれに釣られるように見渡すと、忍と真緒が並んでなにやら喋っていた。
──あの男は。
生徒会役員だったはずだ。あの男だけは猛烈に覚えている。何故なら、忍に抱きついていたから。
自分でもこの執着ぶりは気持ち悪いと思う。でも、我慢することが出来ないのだ。
しかし、忍は綺麗な見た目をしている。
一年生の間でも忍の話題で持ち切りだ。腰が細いだとか、声が綺麗だとか、切れ長の目がたまらないとか。
聞いていて正直いい気はしないが、やはり周りから見ても忍は綺麗なんだと思ってしまう。
「いやー、大宮先輩ってやっぱ綺麗だよな。おまえが気に入る理由がわかるわ」
「……俺は別に外見だけで好きになったわけじゃないんだけど」
「でもさぁ、急に好きですとか言われても『ああ、こいつ自分の顔好きなんだ』って思うじゃん」
「……う」
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