59 / 131

[4]-1

「優都。おまえ昨日体験行った?」 「んーん、行ってない」 「なんでだよー、もしかして部活入らない気?」 「うん。とりあえずいいかなって」 目の前でカレーを食べている友人がため息を吐いた。片谷も麺を啜る。学食はそこまで美味しいというイメージではなかったが、やはり金持ち高校とだけあって美味しい。 心からこの高校に入ってよかったと思う。 「晃平(こうへい)は何部に入んの?」 「サッカー部かな。面白い先輩いるし。えーと……晟先輩とかだったかな」 「……ふーん」 なるほど。晟はサッカー部なのか。 これもいつか役に立つかもな、と思い片谷は記憶した。 スープを蓮華で掬ったところで周りの生徒がざわつく。片谷もそれに釣られるように見渡すと、忍と真緒が並んでなにやら喋っていた。 ──あの男は。 生徒会役員だったはずだ。あの男だけは猛烈に覚えている。何故なら、忍に抱きついていたから。 自分でもこの執着ぶりは気持ち悪いと思う。でも、我慢することが出来ないのだ。 しかし、忍は綺麗な見た目をしている。 一年生の間でも忍の話題で持ち切りだ。腰が細いだとか、声が綺麗だとか、切れ長の目がたまらないとか。 聞いていて正直いい気はしないが、やはり周りから見ても忍は綺麗なんだと思ってしまう。 「いやー、大宮先輩ってやっぱ綺麗だよな。おまえが気に入る理由がわかるわ」 「……俺は別に外見だけで好きになったわけじゃないんだけど」 「でもさぁ、急に好きですとか言われても『ああ、こいつ自分の顔好きなんだ』って思うじゃん」 「……う」

ともだちにシェアしよう!