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もしかして、見られたくなかったのだろうか。
ここは嘘でも見ていないと言うべきだったかなと思うと忍が口を開く。
『……出来れば忘れてくれると嬉しいな』
『どうして? 告白されるの嫌だから?』
『そういうんじゃないけど……少し冷たくしすぎちゃったからさ』
あ、気にしてるんだ。
確かに女の子相手に少し冷たすぎたかもしれない。
見た目と同じようにかなり繊細なんだなと思う。
『どうしてあんなに冷たくするの?』
『うーん……優しく振って、期待させるのも可哀想じゃない? それならきっぱり言った方が楽なんだよ』
そうなんだ。ということは、告白され慣れているということか。
やっぱりそうか。顔は整っているし、優しそうだし。
片谷が返答に困っていると、忍は苦笑した。その顔があまりにも綺麗で。
心臓が大きく跳ねた。皮膚を突き破って出てきてしまうのではないかというくらいに。
『ん、困らせちゃった。ごめんね』
『ううん。大変なんだって思って』
『……オーケーすればいいと思うんだけど、好きでもないのにつき合うのはもっと嫌だから』
しっかりしているんだ。
確かに、こっちは好きでもないのに好意を押しつけられたら嫌だ。
もっとこの人のことを知りたい。
仲良くなりたい。
そう思っていたが、後ろから聞きたくなかった声が。
『……いた! お坊ちゃま、だめですよ! このあとパーティがあるというのに……』
『……パーティ?』
使用人だ。忍が聞き慣れない言葉に使用人と片谷の顔を交互に見ている。
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