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「どうして君はそんなことを……っ」
「しー。他の人に聞こえちゃったらまずいんじゃないんですか?」
自らのくちびるに人差し指を当てる。この人は敬語キャラで固定させているから、普通の言葉遣いで話すとキャラが崩れてしまう可能性があるからだ。
そんな真っ当な片谷の指摘に、諦めたように忍は息を吐いて手を差し出してきた。
「ピアス」
「あ、はいどーぞ。ていうかこれ……ブランドものですよね?」
「そうだけど……」
「俺も持ってますよそのブランドの。ほら」
自分のピアスを差し出す。裏側に彫られているロゴを見せると忍が反応した。
どうやら、趣味が合うとは思っていなかったようだ。
「ほんとだ。びっくりした……おまえもここのやつ買うんだな」
「はい。先輩もなんですね」
「うん。好き」
やや伏し目がちに忍が言った。
好き、という言葉に反応してしまう。片谷に向けられた好きではないのに、忍からのその言葉を欲しているあまりに脳が誤解しているようだ。
「……なんだ、どうかしたか?」
「いえ、なんでも」
「始まるぞー」
忍の声で聞くとこんなにも好きという言葉は化けるのか。知らなかった。
更に好きになってしまった。どうしようか。
少しでもこれでかっこいいところを見せて忍にいいイメージを持ってもらうしかないか。
──頑張ろう。
「よーい……はじめ!」
ジャンプボールで試合が開始された。バレー部の背が高い二年生がこちら側に飛ばしてくれたので、ありがたくそのボールを頂戴して勢いよく相手側に投げつける。
そのボールは中々いい身体つきをした一年生に当たり、審判の笛の音が鳴り響いた。
その瞬間、片谷側のチームから歓声が湧き上がる。どうやら他のクラスも見学しにきたようで観客までいた。
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