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一人でぶつぶつとなにかを言っている晃平を教室に置きっぱなしにし、忍がいる教室に向かう。
ホームルームが終わったばかりのようで、まばらに生徒がドアから出てきた。
「片谷くんいつも来てるねー」
「忍さんならまだいるよ」
「ありがとうございます」
すっかり片谷がここに来るのが恒例となっている。それも片谷が望むことだった。
忍の席は把握済み。そこに目を向けると案の定忍と晟が話していた。
忍はこちらに背を向けていたが、晟は片谷に気づいたようで手を振ってきた。
手を振り返すと忍が片谷に気づき、あからさまに「来やがった」という顔をする。
本当は心のどこかで期待していたくせに。
教室の中に堂々と入り、忍の隣に立つ。晟の顔をまじまじと見るのはこれが初めてな気がした。
鼻は高い。目は奥二重よりの二重といった感じで、顔立ちは悪くはない。忍と並んだら若干霞んでしまうものの、忍と並んでいることで不思議と安心感を与えてくれるものだ。
総評、中の上。
「こんにちは、晟先輩」
「やっほー。相変わらずイケメンだねぇ」
「いえ、そんなことないですよ」
年上の人に褒められたときは謙遜、あるいは否定する。これは参加したくもない社交場やパーティで身につけたことだ。
上手く気に入られなければいけない。
相手の機嫌を損ねるようなことはしない。
「じゃあ、忍先輩もらいますねー」
「どーぞどーぞ」
「はっ!? おい、俺は物か! ちょっ……こらー!」
手をがっしりと握り、教室から忍を連れ出す。部活動があるから廊下にはあまり人がいない。
好都合だ。
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