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「では、発車いたします」 運転手も喋り好きなおじさんではなく気品に溢れたおじさま、といった感じだ。 話に割り込んできそうな雰囲気はしない。 「今日はどこ行くんだ? 聞いてないんだけど……」 「ああ……お楽しみです。色々忍先輩に楽しんでもらおうと思って」 「……拉致るなよ?」 「そんなことしませんよ。多分、先輩と俺って好きなものとか趣味とか結構合うと思うので」 そう言った片谷が耳につけてあるピアスを触った。 忍がつけているピアスと同じブランドのもので、忍も似たようなデザインのものを持っている。 確かに、合うと言われれば合うのかもしれない。 ──一緒にいて全然不快じゃないし。 「なんか、周りに俺と似たようなものとか同じものを持っている人が増えたんですよね」 「人気者の証拠だ」 「だから持ち物変えようと思って。スマホケースとか結構安いの使ってたんですよねー」 そう言いながら片谷がスマホを取り出した。スマホ元々の色を隠さないように透明なものをつけている。それにちょっとした装飾がついただけのもので、確かに安そうな気がした。 なんでもかんでも高価なものを使っていると思ったが、違うようだ。 「おまえでもそういうの買うんだ。有名なとこのやつでも使ってるかと思った」 「意外と庶民派ですよ? こだわるのはこだわりますけどね」 その言葉にはつい納得してしまった。 片谷が身につけているアクセサリは毎日同じというわけではなく少しずつ変わっている。 きっと自分を飾ってくれるものに対しては結構こだわっているのだろう。 それは忍も同じだ。 「先輩は……いつも同じやつ身につけてますよね。気に入ってるんですか?」 「気に入ってるってより……俺ピアスばっか買ってて他のやつあんま興味ないんだよ。だから指輪とかネックレスも、ずっとこれ」

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