85 / 131

[5]-8

「お二人って、お友達なんですか?」 「俺が後輩で、こっちの綺麗な男の人は先輩です」 「へぇー! 二人ともかっこいいですね……!」 ふと片谷のことを横目で見る。明らかに作り笑いをしていて、女子が気づかないかはらはらしてしまう。 しかし、女子と話したのは本当に久しぶりだ。 外出するといっても頻繁にはしないし、声をかけられるのも男ばかりだったから。 なるほど、こいつといれば逆ナンされるのか。 「あのぉ……私たちも二人なんですけど、よかったらご一緒してもいいですか……?」 そう言いながら片谷に向かってあざとく上目遣いをしている。 そんなことしたって、片谷はその上目遣いとやらには慣れているから靡かないだろうなと思っていると本当にそのようで。 「……ごめんなさい。俺たち、普段寮生活しててやっと外出できるんですよね」 「えっ、あ……そうなんですか?」 断られるとは思ってなかったのか、女子が狼狽した。 自分の容姿に自信があるようだ。 自信があるのはいいことだが、自分の思い通りにいくとは限らない。 なんたって、忍でさえ思い通りにならないことがあるのだから。 中には自分のことをどうとも思わない人間もいるのだし、見極めることが大切なんだよな。 上の空でそう思っていると、会話が進展していたようで片谷が急に肩を組んでくる。 「デート、なんです」 「っは……!?」 え、待て待て。 なにがどうなってこうなった? デートって、デートしている覚えはないのだが。 片谷のその言葉に女子はなにかを想像したのか小さい声で「ごめんなさいっ」と謝り、前を向いた。耳が赤く染まっている。 ああ、周りから見たらこんなのつき合ってると思われてしまう。

ともだちにシェアしよう!