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通りを抜けると、二人だけの空間と錯覚させられる場所から正反対の雰囲気に包まれる。 色んな人がいる。 「さ、こっちです」 「うん……あっ、待って」 つい、片谷の近くから離れないようにと空いている左手を掴んでしまう。 片谷が一瞬動きを止めた。そして、こっちを見た。 その顔は赤く染まっていて、目は大きく見開かれていて。 ……あ。 忍も釣られて赤くなる。 「……反則」 片谷がぼそっと呟いた。 あれ、どうして俺まで顔が熱くなっているんだ。 ピアスを選んでいても、何故か片谷の傍にいるのに落ち着くことが出来なかった。 *****

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