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風呂から上がり、洗面所へと繋がる扉を開ける。
──と、それと同時に物音がした。
「先輩、すみません。タオル置くの忘れて──」
「え」
片谷がタオルを持って入ってきた。濡れたままで全裸の忍はどこも隠しておらず、片谷が見たことがない部分までさらけ出されていた。
当然咄嗟に隠すことなど出来ず。
「……あっ」
「やっ……」
片谷が硬直した。ついでに忍も硬直した。
数秒後、片谷が目を手で覆った。
「……すみません。タオル……置いときます」
「……」
恥ずかしすぎて言葉が出なかった。片谷がゆっくり出て行き、ドアが閉まったのを確認してから忍はへたりこんだ。
──あ、あ、あろうことか裸をみらっ、見られっ……! あー!
タオルで濡れた身体を拭き、羞恥と体温で赤くなった身体を隠すように借りた服を着る。服のサイズは忍には少し大きくて、片谷の匂いがした。
「恥ずか死ぬ……」
猫背になりながら洗面所を出てリビングのドアを開けると、そこには土下座した片谷がいた。
「うおっ」
びっくりした。
「すみませんっ。俺、まだ見る予定なくて……あっ、違う。見るつもりじゃなかったんですけど、見ちゃいました……すみません」
「……はぁ」
見る予定じゃなかったって、なんだその日本語。
まるでいつかは見る、とでも言いたげな言葉だな。
それでも土下座までされるようなことじゃないし、いうてそこまで気にしてもいないし。
ふん、しょうがない。許してやろう。
「別にいいよ。女の子じゃねえんだし」
「ほ、ほんとですか?」
「うん。てかお腹空いた」
あ、なんか振り切ったらどうでもよくなってきた。よし、ご飯食べよ。
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