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黙々とご飯を食べていると、片谷がじっと見つめてくる。なんだ? 「……なに?」 「いえ、キスはしてくれないのかなーって」 「……っぐ」 ちょうど麦茶を飲んでいたところで、変なところに麦茶が入るところだった。 何度か咳き込み、息が整ってから片谷を睨むようにして見る。その目は潤んでいた。 「……おまえはさ、キスして欲しいの? そんで、言いたくないの?」 「両方当たってます。して欲しいし、言いたくない。たかが好きになった理由なんでしょうけど、俺にとってはされど、なんです」 ……哲学的な。 この様子だと口を滑らせるような気配もないし、忍がキスをして聞き出すしかない。 まあそこまで聞きたい理由なんて特にないが、男を好きになるなんてなにかしらの理由がないとありえないだろうし、なによりもう少し片谷を知りたい。 お節介すぎるだろうか。 でも知らないことがあるなんて気持ち悪いし、片谷が一人で抱えているならば。 「……一回でいいの?」 「あれ、そっちを選ぶんですか」 「……」 「なにもしないっていう選択肢もあるんですよ」 片谷が困ったように笑う。まさか気が強い忍がキスをするほうを選ぶなんて思いもしなかったようだ。 食べる手を止め、片谷を見つめる。根負けしたのは片谷のほう。 「……ん、とりあえず食べましょう。話はそれから」 「わかった」 そこからは、特にその話に触れることなく他愛もない話をした。 片谷はずっと平静を装っていて、そんな片谷が忍は不思議だった。

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