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「でも、忍先輩のそれはわからない。自分でも不思議なくらい……なのに忍先輩への『好き』はどんどん溢れてって」
片谷はなんというか、言葉を選ぶセンスが長けている。
聞いていて納得するような、それでいて引き込まれるような。
「要するに、わかりません。俺は超能力者じゃないし。だからいつか忍先輩の口から聞きたいって思ってるんですけど……それはいつになるんでしょうね」
片谷が首を傾げた。忍も首を傾げた。
忍は、片谷に対してまだ好きという感情の名前をつけてはいけないと思っている。
だからこそ、言わなければならないし聞かなければならない。
「……片谷」
「はい」
「俺は、いつかおまえに言わないといけないと思ってる。自分の気持ち」
「……はい」
片谷は十分自分に向き合ってくれる。だから今度は忍が向き合う番だ。
「でも俺は、おまえの全てを知って応えないといけないと思う。あとでやっぱり無理なんて思いたくないし、やっぱりつき合っとけばよかったって思うなんて、嫌」
これは忍の素直な感情。
片谷も受け入れてくれたようで何度もうんうんと頷いていた。
「……だから、教えて」
「なにを?」
「好きになってくれた理由」
諦めきれず、そう言った。
だって、知りたいじゃないか。
もちろんただの好奇心だけではない。
片谷のことを知りたいんだ。
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