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「んっ……」
くちびるは、くっついた。
でも、ここから先どうすればいいのかわからない。
忍には、ディープキスをするほどの技量はないし、ずっとこういうキスをするのにも限界がある。
耐えきれず離れようとしたそのとき、片谷がくちびるをより一層強く押し当ててきた。
「俺があなたを好きになったきっかけは、見た目でした」
「んっ、んくっ」
「……幼い頃ながら綺麗な人には惹かれてしまう、そう思いましたがあなたは違った」
「っは……ぁ」
キスの合間に、片谷が告白し始めた。
くっついたり離れたり、そうするたびにリップ音が鳴り響く。
「あなたの優しさと、その他の全てを好きになったんです」
間近で片谷と見つめ合う。
忍の息は荒いままなのに、片谷は全く普段通りだ。なのに雄臭かった。
その理由は……目が、ギラついていたから。
その顔にすらゾクゾクしてしまうなんて、本当に自分はおかしい。
片谷に──壊される。
壊されてもいいと思う。
「あなたが……欲しい」
耳元で、そっと囁かれた。吐息混じりに、感傷がこめられて。
耳を触られた。耳には片谷が選んだピアスがついている。それを、弄るように触られた。
擽ったい。
気持ちいい。
「はあ……どうしよう。抑えられない」
「っ……」
「あなたの所為です……責任、とって欲しいな」
いつもより甘ったるく大人より大人びた声でどんどん告げていく。バラエティー番組のタレントの声など、最早耳の中に入ってこない。
身体が、片谷に飲まれてく。犯される。
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