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身体と身体の距離が縮まる。離れることを許してくれない。
「はー……」
片谷がまた息を吐き出した。首筋に、生暖かいそれがかかる。
「抱きたい」
その言葉と同時に腰の辺りに手が回され、強く強く抱きしめられた。骨が軋むんじゃないかってくらい。
忍は、少し冷静になって片谷の言葉を思い返す。
『幼い頃ながら──』
幼い頃ながら?
どういう意味なのだろう。
待って。訊きたいことが多すぎて頭が回らない。キスの相乗効果も相まって思考が小学生まで低下した。いや、幼稚園児並かもしれない。
与えられる温もりが。時折首に当たる息が。
気持ちよくて離れようとすることが出来ない。
あ、どうしよう。
身体が片谷を欲している。
「先輩、もう……離れて。これ以上触れてたら、持たない……」
片谷が、忍の腰に回していた手を緩めた。でも、離す気はないようだ。
早く、離れなきゃ。
なのに、離れたくない。
矛盾する。思考も、身体も。
「先輩」
「……」
「はは……なに、先輩抱かれたいんですか」
片谷が乾ききった笑みを思わず、と言った様子で笑った。まあ、本当は笑えるほどの余裕はないんだろうけど。
もう、どうでもいいや。
片谷にそういうことをされてドキドキしたんならこいつのことが好きだと認めていい。
──どうせ、あと三週間だけだ……
忍は、ゆっくりと口を開いた。
「抱けば」
「っ……」
「なあ、おまえほんとに抱けんの? ……無理だろ? 俺のこと好きなら」
「……先輩、間違ってますよ」
押し倒された。柔らかいラグに。
「好きだから、抱くんです」
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