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きっと自分の顔はだらしなく快感に浸っている。
そんなみっともない顔を晒していると思うだけで恥ずかしくなってくる。
力を入れるなと言われたが、無理かもしれない。
世の男性カップルはこんな試練を乗り越えたのだろうか。
「んっ」
指がゆっくりと入ってくる気配がした。
本来の用途とは真逆な行為をされているため異物感が半端ない。
これが快感に変わるなんて全く予想できないし、逆に痛みしか感じられないのではないだろうか。
「先輩は、女性としたことはあるんですよね」
「……ある、けど」
「前にも話した気がするんですけど、俺もあるんですよ」
普通、こんなことをしながらほかの奴の話なんてするのだろうか。
まあいいか。
この時点で自分たちはきっと普通じゃない。
「俺は相手の方にしたいしたいと言われてしたんです。けど、思ってたのと違うっていうか」
「……ぅっ、ん」
「なんて言うんだろう。女性の身体はこうなってるんだって感じでした。思いのほかぐちゃぐちゃだった」
う、なんかグロテスクだけど大丈夫か?
ぐちゃぐちゃって……言葉選べよ。
「そのとき俺は知識とかほとんどなかったし、手探りでやってたんですけどいざやっても全然気持ちよくなくて」
「……ふうん」
「でも相手の方はわざとらしいくらい声を出していて。俺、もうその出来事で女性が苦手になったんです」
「は……!?」
なんだそれ。
女性が苦手になったって……仮にも片谷財発の息子がそれでいいのか?
でも、ここでこいつのことを否定したら駄目な気がする。
なんとなく、だけど。
「たまに社交場とか行くんですけど。勧誘がすごいんです。もう、うざいくらい」
「……」
片谷がほんの少しだけ辛そうな顔をした。だがそれも一瞬で、すぐに元の片谷に戻った。
何故だろう。
片谷がいつも通りに見えなくて、なんだか守ってあげないといけないのではと思ってしまう。
こんなことをしながら思うことではないだろうが。
「でも……先輩とはしたい。そう思ったの、初めてなんです」
「……あっ、んっ!」
動いていた指が二本に増やされ、中をぐりぐりと刺激される。
すっかり話に夢中になっていて力が抜けていたから、入りやすくなったのだろう。
もう力の入れ方を忘れてしまった。
片谷の腕を押さえても、動きがあった止まる気配はしない。
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