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「……先輩がほかの奴のものになるって考えると、狂いそう」 「んっ、ん……ふっ」 「すみません……好きなんです。どうしても」 何度目か、好きと言われた。 最初に言われたときは一切信じられなくて、なんだこいつと思っていたのに。 忍の顔が好みなだけだろうとしか思っていなかったのに。 今では忍の全てに惚れたんだなと自惚れることができる。 だって、あの賭けをしてからほぼずっと片谷と共にいたから。 愛されていると思ってしまう。 好きになってしまうんじゃないかって思ってしまう。 こんなに真っ直ぐで、淀みのない好意を向けられたことは初めてだ。 心臓がばくばくと高鳴る。 もう、片谷とつき合ってしまってもいいんじゃないかと思っている。 ただ今それを決めてしまったら片谷が納得しない。 あの賭けの内容は、一ヶ月以内に片谷のことを好きにならなければ忍の勝ち。それまでに好きになったら片谷の勝ち。 それなのに忍が「つき合ってやってもいい」と言ってしまったら片谷は同情されたとしか思わないだろう。 きっと片谷が好きなのはそういう忍じゃない。 意志を曲げないで最後までやり通し、優しい心も持った忍なのだろう。 片谷にとって生ぬるい優しさなんていらない。必要ない。 「……困りますよね。こんなの言われても。でも……好き」 真っ直ぐな瞳で見つめられて、そこから背くことなんてできない。 背けた瞬間……なにかが壊れてしまいそうだから。 「……片谷」 「あ、ごめんなさい……手ぇ止めて。続けますね」 「ちがっ……ん、ああっ」 二本から三本に増やされ、呼吸することが苦しくなってきた。息を吐く代わりに喘ぎが漏れる。 忍は続けてくれと言いたかったのではない。 本当にこんなことがしたいのかと言いたかった。 でも、言わなくて正解だろう。 目の前の片谷は男臭く、情欲に塗れた顔をしていた。

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