115 / 131
[7]-2
「あと、片谷くんが毎日確認しにきてたな。忍先輩いますかーって」
「……」
「恒例だろ? おまえが連れ去られんのって。でもいないからその光景も見られなかったし。今日は全員そわそわしてるかもな」
そう、だったのか。
連絡が四日間一切来なかったのは、忍を思ってのことだったのだろうか。
……そう、受け止めておこう。
晟と話しながら寮から出て、学校に向かう道中。
いつもより騒がしくて、やけに見られているような気がした。
晟が言っていたことは本当なのかもしれない。
「晟、あとでいいからノート貸して」
「ああ、いいぞ……なんか、元気なくねえ? 病み上がりだからか?」
「……え?」
元気なく見えたのか?
それは、意図してなかった。元気がないように見えたらさらに騒がしくなるだろうし……気をつけなければ。
にしても、晟がそんなことを気づくなんて。
「……あー……まあ、晟にはあとで話す。俺の元気がないように見えるのも気の所為だろ、きっと」
「そうしとくわ。ま、おまえのことだしなんかあったんだろ」
鋭い。
さすが、友人と言うべきか。
それよりも、片谷と顔を合わせるのがなんだか気まずい。
あまり会いたくないかも。
意識、してしまう。
*****
「……え、抱かれたの? 嘘だろ。冗談だって言ってくれよ」
「ほんとだよ」
昼休み。
あまりひとがいない、屋上で弁当を食べているときに片谷に抱かれたことを晟に言った。
その反応が、冒頭のものだ。
さすがの晟でも、やっぱり驚くか。まあ……そうだよな。
男に抱かれるなんて、誰が聞いてもびっくりする。
「ええ……待って、整理させてくれ」
「ああ」
パンを齧る。当然、周りには誰もいない。
晟が頭を抱えたまま固まった。申し訳ないことをしてしまったのかもしれない。
──ごめん、晟。なんかごめん。
ともだちにシェアしよう!