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「あと、片谷くんが毎日確認しにきてたな。忍先輩いますかーって」 「……」 「恒例だろ? おまえが連れ去られんのって。でもいないからその光景も見られなかったし。今日は全員そわそわしてるかもな」  そう、だったのか。  連絡が四日間一切来なかったのは、忍を思ってのことだったのだろうか。  ……そう、受け止めておこう。  晟と話しながら寮から出て、学校に向かう道中。  いつもより騒がしくて、やけに見られているような気がした。  晟が言っていたことは本当なのかもしれない。 「晟、あとでいいからノート貸して」 「ああ、いいぞ……なんか、元気なくねえ? 病み上がりだからか?」 「……え?」  元気なく見えたのか?  それは、意図してなかった。元気がないように見えたらさらに騒がしくなるだろうし……気をつけなければ。  にしても、晟がそんなことを気づくなんて。 「……あー……まあ、晟にはあとで話す。俺の元気がないように見えるのも気の所為だろ、きっと」 「そうしとくわ。ま、おまえのことだしなんかあったんだろ」  鋭い。  さすが、友人と言うべきか。  それよりも、片谷と顔を合わせるのがなんだか気まずい。  あまり会いたくないかも。  意識、してしまう。 ***** 「……え、抱かれたの? 嘘だろ。冗談だって言ってくれよ」 「ほんとだよ」  昼休み。  あまりひとがいない、屋上で弁当を食べているときに片谷に抱かれたことを晟に言った。  その反応が、冒頭のものだ。  さすがの晟でも、やっぱり驚くか。まあ……そうだよな。  男に抱かれるなんて、誰が聞いてもびっくりする。 「ええ……待って、整理させてくれ」 「ああ」  パンを齧る。当然、周りには誰もいない。  晟が頭を抱えたまま固まった。申し訳ないことをしてしまったのかもしれない。  ──ごめん、晟。なんかごめん。

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