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「えっと……それは、無理やり?」
「ううん。最初はそんな感じだったけど、最終的には俺が挿れろっつった」
さらに晟が混乱してしまったらしい。頭の上に大量のはてなマークが見える、気がする。
ジュースを飲んで、口の中に残った物を飲み込んだ。
あまり美味しくない。
「強姦、ではないんだな?」
「当たり前だろ? 片谷はそんなこと……」
「え?」
あれ? 今、なんて言った?
少し前の自分なら、片谷のことを擁護するようなことは言わなかったはずなのに。
どうして。
「おまえ……やっぱ変わったよな。片谷くんに会ってから」
「え?」
「性格が柔らかくなったし、笑うことが増えた」
晟が真面目に、そう言い始めた。
忍もつい黙ってしまう。
なんとなく、そういう空気な気がしたから。晟が、大事なことを言う気配がした。
「だってさあ、去年とか酷かったじゃん。グレてたよな、完全に」
「いや……」
「なのに、今は楽しそう。片谷くんのおかげじゃね?」
忍が黙りきっていると、晟がお構いなしに続けた。
「おまえが求めてたのって、片谷くんみたいな人間じゃないの?」
「……!」
「誠実で、真っ直ぐで、自分の意見しっかり持ってて」
その言葉に、つい忍は顔を上げた。
自分はどれだけ情けない顔をしてたんだろう。晟か本当に困ったように笑っていた。
確かに、変わったとは思う。
でも……そんなこと、きっと晟に言われなければ認めていなかったはずだ。
第三者に言われてやっと認めるなんて……最低だ。
「今まで、忍の外見だけで好きになって、でも中身知ったら離れてく奴しかいなかったじゃん。でも、片谷くんは忍の中身まで知って、側にいたんじゃん。あんなにべったり」
「……べったり?」
「本性も、猫かぶりなのも。全部知ったのに、離れないで鬱陶しいくらい」
やっぱり他人から見てもそうだったのか。
忍も少しそれは思っていたが。
ああ、どうしよう。
今……猛烈に片谷に会いたい。
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