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 ……え?  好き? 自分が、片谷のことを? 「え、なに。おまえまだ認めないでいるつもりなの?」 「いや、そういうことじゃないけど」 「……生徒会補佐サマが情けねえなあ。そうまでして負けたくないの?」  晟の言葉は全てが的を得ていて、なんにも言い返せない。  ああ、違うか。言い返す言葉が見つからないんだ。 「もしかして。自分は女が好きなはずだとか思ってる?」 「違っ……」 「男を好きになる自分なんて恥ずかしいって思ってんのか? 片谷くんはあんなに真っ直ぐ忍に気持ちをぶつけてるのに?」 「違う!」  ここまで、大きな声を出すのは久しぶりなんじゃないかというくらい大きな声を出してしまった。  まだ喉は完璧には治っていなくて、突き刺すような痛みが襲ってきたのに、それよりも晟に反論したくてたまらなかった。 「そんな……そんなこと思ってない! ただ俺はっ……曲がりくねった俺が、真っ直ぐな片谷を汚したくないだけなんだよ!」 「……」  もう、既に汚してしまったも同然だが。  ……まだ、間に合う。 「片谷のことが好きなのは認めるよ。っ、でも……このまま、思いを伝えずにいれば俺もあいつも、傷つかずに済む!」 「……」 「俺は、もう……ひとを傷つけたくない。片谷を……汚したく、ない」  声がどんどん小さくなってしまった。  これは、忍の本心だった。  散々穢れた自分が言うべきことではないのかもしれないが、片谷には片谷のままでいてほしかった。  このままだと、涙が出てしまう。  涙なんて、もう出し切って枯れてしまったと思っていたのに。  思いが燻って、壊れそう。破裂してしまいそう。 「……忍、変わったな」 「……え……?」 「一年前まで、周りなんかどうでもいいとか言ってたのに」  晟が、忍とは真逆で落ち着いた声色でそう言う。  自然と忍の気持ちもフェードアウトしていった。 「おまえ、片谷くんのこと好きなの?」 「……っき、だよ」 「あ? なんて?」 「片谷のことがっ、好きだよ!」  そこまで大きな声ではないが、忍は抑揚を大きくつけてそう言った。  ……そのとき、晟の企みに気づくべきだったのに。

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