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「俺、去年は片谷が思う以上に荒れてて。こんなんじゃなかったんだ」 「……」 「でも、俺……変わったんだ。自分では気づかなかったけど……晟が教えてくれた」 「晟、先輩が?」  こくっと頷く。  真っ黒な髪が、揺れる。  黒い髪と白い肌の対比がかなり綺麗で、片谷は魅入っていた。 「認めたくなかったんだけど……もう、認めざるを得なくて」  思わず、笑みが零れる。  これから言うことと、片谷の反応を想像して。  賭けには、負けたけど。 「好きだ、優都」  片谷のことをどきどきさせたという意味では、勝ったかもしれない。 「……え……」  片谷の顔が、見たことないくらいに赤く染まっている。  それに釣られるように忍も赤くなってしまって。 「なっ、なんか言えよ。俺だけ喋ってて恥ずかし……」  言葉の途中で、強く強く抱きしめられた。  骨が軋むんじゃないかって思うくらいに。それでも、痛いとは思わなかった。  片谷の、早い鼓動がとくとくと伝わる。 「先輩……いいんですか?」 「……なにが?」 「先輩、賭けに負けるんですよ? まだ、期限はたっぷりあるんですよ?」  本当は嬉しいくせに、そういうこと言うのか。  こういうところは、片谷らしいというか。  もっと、こういう意外な面を知りたい。自分しか知れないような、片谷の新しい一面を見つけたい。  こんな欲まで、出てきてしまったのだ。 「俺が好きになったんだよ、ばーか」  言うまでは躊躇うけど、言ってしまったらこんなにもすっきりするのか。  片谷が忍のことを抱きしめる力を緩め、間近で忍の顔を見つめてくる。  瞳に、忍が映っている。 「俺も……好きです」 「っ」 「俺と、つき合ってくれますか?」  目から涙が溢れそう。  溢れそうになって、堪えるために片谷に抱きついた。  そして、こもった声で言う。 「……はい」

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