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1章 5話 突然の発情期

 熱い。熱い。体が熱い。  欲しい。欲しい。  熱を覚ますアレが欲しい。 「………………と」  埋めて。埋めて。ぼくの中に埋めて。  何を?   分からないけど、埋めて。 「……………と……………りと」  だぁれ?   ぼくを呼ぶのはだぁれ?  あなたがぼくにアレをくれるの? 「リト!」  お願いだから、ぼくにちょうだい。 「駄目だ! リト!」  伸ばした手を叩き落されてはっとして顔を上げた。 「にぃちゃ、ぼく、びょうき? おなかがあついの」 「いや、病気ではない。発情期がきたんだ」 「はつじょうき」  ぽやんとした頭で考えるけど、すぐに思考が霧散する。 「リト、今から俺が言うことは今のお前では理解できないかもしれないが、頭の片隅にでも置いておくんだ」  よくわからないよ、にぃちゃ。 「リト、リト。こっちを見ろ」  顎を持たれて強制的に顔をにぃちゃの方に向かされる。  だけどぼくが気になるのはお腹の熱の事ばかり。 「ああ……くそ、俺もお前の発情香にもっていかれそうだ」  お腹を触るとゾクゾクと快感が背中を走る。 「ふぁ」 「最初の発情期は多分短いだろうが、これからお前は発情期が終るまでこの部屋で一人で過ごすんだ」  お腹擦ってたらこの熱もなくなるかな?  痛い時に擦ったら痛くなくなるもんね。   「あ、あ、あ」 「こらリト。こっちを見なさい」  擦ってた手を片手で持たれてそれも出来なくなってしまった。 「今から自慰の仕方を教えるから、それで発情期が終るまで耐えるんだ」  親指と人差し指を輪にしてぼくの目の前に突き出してくる。 「この形でペニスを握って扱く。分かるか?」  手を上下に動かすにぃちゃを見てうんうん頷く。 「これは潤滑油って言うんだけど、扱きすぎるとペニスが痛くなってしまう。だからそうならない為にも潤滑油を使ってするんだ」  目の前にあるのはとろみのついた液体が入った小瓶。 「手にとって手の熱に馴染ませた後にペニスに塗る。で、さっき俺が教えたように扱く。これだけだ。こらこら出すな。俺が部屋から出た後にしてくれ」  渡された小瓶を開けて手に潤滑油を出そうとしたら止められた。 「あぁ、それから、後の方が濡れて疼くかもしれないが、触ったらだめだぞ。触っていいのはペニスだけ。後は伴侶だけが触れていい場所だ。分かるな?」  後?   それよりにぃちゃ手を離して。   「こらこら暴れるな。いいか、リト。後は絶対に駄目だからな。ご飯は俺が用意する。汚れとかは気にするな。時たま様子を見に来るから。じゃあな、リト。辛いかもしれないが、耐えてくれ」  「ふぅ」と息を吐いてにぃちゃが出ていった。  ズボンの前をずらしておちんちんを取り出す。  ペチンと音がするほど勃っているおちんちんを手で触るだけで声が漏れた。  おしっこをする為だけのものだったのに、ぼくの勃ってる。 「あひ」  にぃちゃが教えてくれたように指で輪を作っておちんちんを握りしめた。 「あ!あ!ああっ!」  ぴゅるっと出た白い液体。出るときすごいきもちよかった。  でもまだ足りない。  にぃちゃ、何て言ってたっけ? 「ああ、あ」  じゅんかつゆ、ぬる。  ああ、そう言ってたはず。 「あ、あ、あ」  でも手を離したくない。  小瓶を片手で持って蓋の部分を口で咥えてはずし、おちんちんにとろりとした液体を落としたら冷たくて体が震えた。 「ひっ」  でも冷たくて気持ちいい。  あ、あ、これ気持ちいい。 「あ、あ」  にちゅにちゅと音をさせておちんちんを扱く。  滑りがよくなったから、手で触ってる時より何倍も気持ちいい。 「あ!あ!あ!」  二回目もすぐに出たけど、全然足りないし熱も治まらない。  閉じられない口から涎が垂れて服についたけど、それを気にしてもいられない。  擦って出して、足りなくてまた擦って出して、を繰り返していると透明だった液体が白くなって泡立った。その時、後ろの穴の方が急に疼いた。  おちんちんを持っていない手で後ろの穴に触れるとぬちゃりと音がしてひくひくと蠢いている。それは何かを誘っているような動き。 『後ろは絶対に駄目だからな』  にいちゃの声が聞こえた気がして顔を上げるけど、そこには誰もいない。 「……は、ぃ……」  後ろの穴を触るのをやめて両手でおちんちんを握って扱く。 「ああ、ああ、あああっ!」  おちんちんの先っぽが少し赤くなって腫れてるみたいに見えたけどぼくはそのまま扱いた。  動く手が止まらない。勝手に動く腰も止められない。  何度も何度も出してるのに、次々と熱が沸き上がってくる。 「ぁ……ぁ……ぁ」  声が枯れても、白い液体が出なくなっても、頭の中は気持ちいいがいっぱいで、他を気にしていることも出来ないぼくは、気絶するまでずっとおちんちんを触っていた。 ***     頭の横でちゃぷちゃぷと音がして目が覚めた。  僕の顔の横にあるのはお湯の入った桶。それから桶に浸けた布を絞っているキト。 「目が覚めたか? リト」 「……っ……けほ……こほ……」  返事をしようとしたけど、喉が引き攣れ、出たのは咳だった。 「とりあえずこれを飲んでおけ」  渡されたグラスを口につけて傾け、貪るように水を飲み干したらやっと声が出せるようになった。 「僕、また熱が出た?」 「発情期がきたんだ。その様子だと何も覚えてないようだな」  発情期? そういえば、異様に体が熱くなったのを覚えてる。  何かを考えようとしてもすぐに他の事に気がいってた。それが何だったか覚えてないけど……   「とりあえずまだ寝ていなさい。発情期で体力を消耗してるだろうから」  寝ている僕の布団を直すとポンポンと優しく叩いてくれる。一定のリズムで叩かれるそれに僕は思考を放棄して眠りについた。 ***  「リトに話しておかなければいけない事がある」そう言われたのは、眠りから目覚めて夕食を作っているキトの背中を見ている時だった。 「話は食事をしながらしよう。リト、ちょっと手伝ってくれ」 「うん」  ちょっとまだ腰がだるいけど、動けない程ではない。鍋の中に魔鹿の肉を入れてるキトの横に立つと僕は目の前にあった茸を食べれる大きさに切って鍋に投入した。  それよりも皆は無事だったのだろうか? 「キト、皆の様子見に行った? 大丈夫だった?」  僕の隣で鍋を掻き混ぜているキトが一瞬手を止めたけど、すぐに動きを再開し僕に顔を向けて眉を寄せると小さな声で呟きすぐに顔を鍋に戻した。 「その話は後でしよう」  キトの様子が気になったけど、こう言うキトは絶対この場で話はしてくれない。キトの眉間に寄った皺に躊躇い僕は話題を変えた。 「ねぇ、キト。僕の発情期どのくらいだったの?」  発情期はだいたい三日から一週間って聞いたことがある。最初の発情期は子供を作れるようになりましたよ、って知らせるものでだいたいが短いらしい。  腸の奥に子供が出来る器官を持っているのはヴィヌワとキャリロだけだ。ベーナ族の女の人は違った器官を持っているっておじいさんに聞いたけど、詳しいことは教えてくれなかった。   「四日だ。それがどうした?」 「んー。なんとなく? キトは何日だったの?」 「俺は一日で終ったな。リトみたいに覚えていないって事も無かった」 「え??」 「最初の発情期ってのはな、前後不覚になるほど重いものじゃないんだ。次のリトの発情期は長くなるかもしれないな。それまでにお前に嫁か婿をとりたいが……」  「無理かもな」とぼそっと呟いてキトが居間の机に皿を並べ始めた。  

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