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Ⅲ 初恋は……④
世界は、この男のものになるのか。
αの創った仮初めの平和を破り、この男が覆すのか。
《リュムナデスの火》総帥・影瑠
俺は今、飛空挺から地上を見下ろしている。
砂丘を、海を
命の散った空から
命の沈んだ海を
《アヴァロン》を
「傷つけはしないさ」
しなった鞭が床を打つ。
「君を」
革のしなやかさに、たちまち後ろ手に絡め取られる。
「私の傍に置くための調教だ」
漆黒の軍服に身を包み、漆黒の仮面で顔全体を覆っている。
「素顔は見せない主義だ。すまないね」
仮面のままの冷たい口づけが、うなじを伝って身震いする
「君に拒まれるのは目にみえているからね。唇にキスはしないよ」
革の冷たい手袋が下唇をなぞった。
「薬は飲まなくていいのか?」
仮面の下が笑った気がした。
「なぜっ」
「知っている。大切な花嫁のパーソナルデータだ。発情期のあるαだろう」
飲まないのは……
「出逢ったのか、運命のΩに」
発情をコントロールできるのは、生涯の番契約を結んだパートナーか、運命の番だけ。
「構わない。君は間もなく、私の運命の番になるのだから」
『贄堕ち』するんだ。
「君のパーソナルデータは、DMAレベルで遺伝子配列まで調査済みだ。
君は私の運命のΩになる」
俺が、運命のΩになったら……
「運命のαは私だ」
無論、
「αだった君のパートナーのΩは、運命解消だね」
「零ッ」
「その男じゃない!君の運命は私だ」
君は私と恋に墜ちる。
軍服の胸ポケットが光る。銀色の針だ。
「自白剤か」
「まさか。君を傷つけないと約束しただろう」
これは……
「Ωフェロモンだ。君はまだαだ。αの君がΩのフェロモンを吸引すれば、どうなるか……分かるね」
発情期のΩのフェロモンを吸い込めば、αである俺は強制発情する。
理性が壊れて……
「私を求める」
闇色の仮面が迫る。
唇に触れる2ミリまで。
「正確には私の生殖器だ。欲しがりたまえ。差し込んであげよう」
欲しがる君に私を挿れたまま、『贄堕ち』を迎えようか。
「私の子供を産むんだよ」
恐がる事はない。
『贄堕ち』した君は私に恋してるんだから。運命の番として。
「目覚めた君は、私を愛している」
注射針が軍服の上から腕を射した。
鞭に絡め取られた俺は逃れられない。
フェロモンの甘美な誘惑が理性を壊す。
今、目の前のαから放たれる芳醇なフェロモンは間違いなくΩのもの。
αの俺は抗えない。
「もう勃起したか。恥ずかしがる事はない。私もだ」
固い怒張があてがわれる。
グリグリ、こすりつけられる。
「腰を振って可愛いね」
「して…ないっ」
「してるだろう。君の大好きなちんこだ」
「ちん……こ」
「そうだよ、ちんこだよ」
「デカいィ~」
「そうだね、私のちんこはデカマラだ」
「デカマラぁ~……アンアン」
固いソレの刺激が耐えられない。
口が勝手に恥ずかしい言葉を言う~
「ちんこ、好きかい?」
「好きぃ~!!大好きぃ~!!」
「それは良かった。大きいけれど、大丈夫かな?」
「おっきいの大好きぃ~!!でかちん好きー!!」
「淫乱な子だ。パイロットスーツの色が変わってしまっている。お漏らしかな」
「ちがう、カウパーなの~」
「カウパーも立派なお漏らしだ。こんなに濡れて恥ずかしいね」
無理矢理なのに。
体が欲しがる。
Ωの香りに欲情が止まらない。
体が疼いて……
「アレが……」
「アレ?」
「欲しい」
「アレとはなんだい」
「後ろに」
「後ろの秘された窄まりの事だね。なにを差し込んで欲しい?」
「………………ん…こ」
「聞こえないね」
「デカいの」
「デカいなんだい?」
雄が欲しい。
アソコに雄が。
「寂しいから」
疼いて、疼いて、どうしようもない。
「ちんこ!!ください~」
軍服とパイロットスーツが衣擦れの音色を奏でた。
「あげるよ。カチカチのデカマラを、君のつぶらなオスマンコに突き刺してあげよう」
俺はこの男に抱かれるんだ……
胸が痛くて、軋むのに。
やがて、胸の痛みも分からなくなるんだ。
罪の意識も、快楽に飲まれて。
初恋を忘れてしまう。
(お前を………)
涙のキスも思い出せなくなって。
さようなら
心の中で伝える事しかできない。
さようなら
好きなのに。
愛しているのに。
こんなにも……
体が、お前じゃない雄を求める。
苦しいのに。
下半身が快楽を欲しいって……
快楽のためなら、なんでもする体になってしまった。
こんなに苦しいのに。
好きな気持ちを、快楽の泥沼に沈められる。
俺は墜ちる。
「体だけでも愛して欲しい」
すまないね……
わずかな理性のカケラが聞いた声は、どうしてあんなにも切なかったのだろう。
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