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平凡な日々のあの日の記憶

 ――――――――  ――――  ――  3月1日。  この日は3年の卒業式で学校は午前中で終わる。  そのことを出かける前にミケにも伝えておいたから、家で待っているだろう。  俺は終わると同時に速攻で教室を飛び出した。  教室の方では、クラスメイトがまたデートかよとか俺の背中に向かって叫んでいるが無視だ無視。  海沿いの道路を早歩きで通る。  最初にミケを見かけたのもこの道路だった。  砂浜に座っている子供がいて、遅いから早くに家に帰れってここから叫んだんだよな。  そうだ、今日もミケは星を見に行くかもな。  俺も一緒に見に行こう。  バレンタインの日。  ミケと海辺で星空を眺めていたとき、ぼそっと呟いたミケの言葉が純粋に嬉しかった。  エレベーターで自分の部屋のある階まで上がる。  今日も玄関前でお出迎えしてくれるんだろうなミケ。  俺はいつものように鞄から部屋の鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。  ………鍵、開いてる…?  朝出かけるときはちゃんと鍵は閉めた。 「ミケただいまー」  俺は玄関先から部屋の中へ声をかけた。が、ミケの返答はない。    そう、いつもなら玄関の前で正座して「おかえり、つばき」と笑顔で出迎えてくれる。  きっとどこか出かけているんだろう。  よく見たらミケの靴だってない。  でもどこに出かけたんだろうか。  さっき通ってきた浜辺にはミケの姿はなかった。  胸騒ぎがする。  もしかしたら、泥棒――。  ミケ誘拐されたのだろうか。  俺は急いで靴を脱いで、部屋の中へと入る。  キッチンとソファーと机、テレビの置いてある部屋。  何も変わりはない。  荒らされている形式もない。  いや、その逆で部屋の中は朝よりもきれいになっている。

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