55 / 88

(7)

「一つ先の駅の近くにあるお店なんだけど……さつきっていう所で…」 「えっ!?そこって…俺この前食べに行ったとこだ」  …つばき来てた…? 「先週の金曜日だったかな」  金曜日…。  その日は、しずくの方が忙しくて、いつもより遅れてさつきの方へ行ったんだった。  で、沙月さんにおつかい頼まれて……  あっ、その時つばきを見かけたんだ。  あれはさつきから帰るところだったのかもしれない。 「あれ…?じゃああのとき見たミケは本物だった…のか…?」  そう言い、大きくため息をついたつばきは「何だよ、あのとき会ってたのか」と小さく呟いた。 「でもじゃあ何でミケ逃げたんだ?」  ………そうほんとはつばきの所へ飛び込みたかった。  でも――― 「逃げて、ないよ?うーん、つばきに会ったかな…?あの日、沙月さんに頼まれておつかいに行ったけど…」  僕はとっさにあのときつばきに気づかなかったということにした。 「そっか。ミケは気づかなかったのか」  そう言ったつばきの顔は少し寂しそうで…。  ほんとは気づいてたよ。そう言ってしまいそうになった。 「まぁ、じゃあ、11時頃さつきに迎えに行く」 「いやでも…」 「俺がミケとご飯食べたいんだ。いいだろ?」  そう言われると、断るなんて出来ない。  僕もつばきと一緒にご飯食べたい。 「………ほんとはその時伝えようかと思ったけど、やっぱり今伝える」  急に笑顔が消え、真剣な顔へと変わったつばき。  ぼそっと呟き、さっきまで僕の頭をなでていたつばきの手が、僕の手を握った。  つばきの体温。温かい。 「えっと…つばき、どうしたの?」  僕は真剣な顔のつばきを見つめた。  あの頃好きだったつばきの綺麗なコーヒー色の瞳に僕が映っている。  本当に綺麗な色だな…。 「俺――ミケのことが好きだ」

ともだちにシェアしよう!