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忍ぶ思う日々、懐古的愛しさ
「………みけくん大丈夫?」
「うわ、ごめんなさい…」
駄目だ。
全然仕事に集中できない…。
注文のミスに配膳ミス…ほかもろもろ、たくさんの失敗の連続。
「大丈夫かい?まだ体調がすぐれない?」
「えーと…体調は大丈夫です」
「そうかい?あまり無理しちゃ駄目だよ」
つばきのあれは……どういうことなんだろう…。
す、き。
確かにつばきはそう言った…。
でも知っている。
すきっていうのにも、二種類あるって…。
だからきっと僕が抱いている感情と、つばきが僕に告げた「好き」違うんだ。
うん。そうだよね。
「ほらこれ食べてちょっと休憩しなさい」
絹子さんがオムライスをカウンター席の机の上にやさしく置いてくれた。
「…ごめんなさい…ありがとうございます」
「謝らなくてもいいのよ。これからの時間はのんびりした時間だわ」
優しいな。
絹子さんもじいやにもほんとうに感謝。
「あっそうそう。昨日の人はみけくんに会えたのかしら…?」
絹子さんは僕の隣に座り、じいやに問いかけている。
「……あのぉ…」
「あっみけくんに聞けばいいのか!」
「えーと…なんのことでしょう…?」
「みけくんのお友達が昨日ここにご飯を食べに来てくれたのよ。そしてみけくんが体調が悪くて帰ったって伝えたらみけくんのお見舞いに行ったはずなんだけど…」
それって――もしかしてつばき…??
「でもあの人だいぶんかっこいい人ね。みけくんあんな人がお友達にいたのね」
やっぱりつばきだ…。
そういえばつばき…オムライス食べたって言ってたような…。
そのあとのつばきの言った言葉に動揺しすぎて忘れてた。
やっぱり弟みたいなすきでも、いきなりつばきから言われたらびっくりしちゃうよ……。
「そうそう、その人みけくんのオムライスすっごく美味しく食べてたよ」
じいやが僕の前に置いたオムライスのお皿に視線を向けている。
「そうね。あっという間に完食してましたもんね」
うん。
だってこのオムライスはつばきのすきな味を詰め込んだオムライスだもん。
つばきの嬉しそうな顔を見るのが好きだったな。
僕はじいやの作ってくれたオムライスをスプーンですくった。
「さてさてこれ食べて、もうひと踏ん張り頑張りましょうね」
絹子さんが笑顔で拳を上げてる。
僕も頑張ろう!
今日はミスばかりしちゃってるから集中しなきゃ。
*
「みけくんお疲れさま。上がっていいよー」
あのあと溜まってたお皿を洗い、終わる時間となった。
じいやのオムライスのパワーかな…?
あのあとはミスはしてない。
よし!
さつきでもミスせず頑張るぞー!
僕は絹子さんとじいやに挨拶して、さつきへと向かった。
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