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「ミケどうした?」
皿を見つめたまま固まってるぼくを心配そうに見つめてるつばきに、ぼくは笑顔で「なんでもない」と答える。
ふたりで手を合わせて「いただきます」と挨拶して、食べ始める。
久しぶりにつばきと一緒に食べるご飯は、今までひとりで食べてたご飯よりすごく、すごく美味しくてあっという間に完食してしまった。
「美味しかった」
ぼくがそう小さく呟いた声に優しく微笑んだつばき。目じりのシワが濃くなって好きだ。
つばきはそのまま空になったぼくのコップを手に取った。
「おかわりなに飲む?」
「えっ?おかわり…?できるの?」
「おかわり自由だ」
ドリンクバー?
そうだったんだ。
おかわり自由なんてすごい。
ぼくはさっきと同じものがいいと言うと、つばきは席を立ちドリンクバーの方へと歩いていった。
「……あっ」
自分で行けばよかったかな…
さっきつばきに、やり方教えてもらったのに…。
ぼくはじっーとつばきの姿を見つめていたが、窓の外から視線を感じ、視線を窓側の方へと向ける。
が、暗くてあまり分からない。
けど、窓の外は特に何もないように感じる。
……気のせいかな。
「どうしたミケ?」
窓の外をじっーと見ていたぼくはいつの間にか、ドリンクバーの方から帰ってきていたつばきに気づかなかった。
「窓の外、何か気になるのか?」
不思議そうにつばきも窓の外を見つめている。
「ううん」
ぼくは首を横に振って、つばきが持ってきてくれたオレンジジュースをひと口飲んだ。
「……あ」
つばきの髪、あと瞳と同じ色の飲み物だ。
つばきが飲んでいる飲み物が視界に入り、思わず声をあげてしまった。
「つばきと同じ色」
「あー。なんか懐かしいな。あの頃も言ってたよな」
つばきあの頃からいつもそれ…コーヒーを飲んでたなー。
「あのとき、ミケが作ってくれたオムライスとコーヒーゼリー美味しかった」
つばきがコーヒーカップを静かに机に置き、真剣な顔つきになった。
「ミケ、これ」
「……ぁ」
つばきはポケットから見覚えのある封筒を取り出した。
「あのとき……ミケが出て行った日にミケが置いて行ったものだよな?」
ぼくは首を小さく縦にうなずいた。
あの封筒の中には、ぼくがつばきには内緒でこっそりしていた配達のお仕事の給金が入っている。
つばきの家を出て行くとき、置いていった。
つばきとの日々はすごく、すっごく楽しくて……ありがとうの気持ちと一緒に置いていったんだ。
「………ミケが、働いていたって知らなかった。どんな仕事してたんだ?」
つばきは、さらに真剣な眼差しで見つめる。
「ぇーと…牛乳と新聞の配達を……」
「それでこんなに?」
目を見開いて、机の上に置いてある封筒を一瞬見た。
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