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忍ぶ思う日々、不穏な気配

昨日は楽しかったなー。 プラネタリウム不思議だった。 屋内なのに、天井一面に星空が浮かび上がるんだもん。すごく綺麗だった。 ぼくは朝の身支度中、昨日のことを思い出していたら、時間ギリギリになっていた。 慌ててシズクへと向かうため、部屋の扉を開けると同時にポトっと何かも一緒に落ちる。 扉の隙間に入っていたそれは、小さな茶色の封筒。 宛名もなにも書いておらず、自分宛てなのかもわからない。 ぼくは不思議に思いながらも、封筒の中身を確認すると、一枚の紙切れが入っていた。 『みけくん、星が好きなんだね。星を見ているミケくん可愛かったなー。今度は僕と一緒にプラネタリウム行こうね。みけくんの隣は僕じゃないと』 ………なに…これ…。 ぼくは慌てて紙切れをぐちゃぐちゃに丸めた。 昨日のプラネタリウムのことが書いてある。 もしかして……昨日ずっとぼくを見ていた人がいる…? ぼくは気持ち悪くて、丸めた紙切れをゴミ袋に入れ袋の口を閉じ、早足でシズクへの道のりを歩く。 今もあの手紙を書いた人が……ぼくのことを見ているかもしれない……。 家の場所も知られているよね…。 シズクへと着いたぼくは変な汗もかき、早足だったので息も上がっていた。 そんなぼくの姿にびっくりしたように絹子さんがタオルを持って駆け寄ってきた。 「みけくん大丈夫?体調悪いの?」 「……大丈夫です。遅刻しちゃうと思ってちょっと走ってきたので……」 絹子さんに渡されたタオルで汗を拭う。 「そう?でもそんなに慌てなくても大丈夫よ」 絹子さんは優しくぼくの頭を撫でてくれた。 そんな絹子さんの優しさに涙がこぼれそうになり、ぼくは誤魔化すように返事した。 ーー今日はお昼前から雨が降り出したからか、お昼のピーク時もお客さんは比較的少なく、ゆったりとした時間が流れていた。 今のこの状態で忙しいと多分ミスを連発していたと思うから、ちょうどよかったのかも……。 絹子さんたちにもあまり心配かけたくない。 「みけくん、顔色がよくないけど大丈夫かい?」 「はい。大丈夫です」 お客さまの席へお水を注ぎに回り終わったぼくに近づき、優しく声をかけた絹子さんにぼくは笑顔で答える。 「無理しちゃダメよ。今日はあまりお客さんも多くないし、早めに終わってもいいからね」 「ありがとうございます」 絹子さんの優しさが、今朝の手紙の恐怖を少し和らげてくれた。

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