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嵐と邂逅

冬の季節。今日も宿泊客は一組。 その宿泊客もチャックインし、夕飯の提供まで終わった頃、ぼくとお母さんは遅めの夕ご飯を取っていた。 「みけくんの作るこのオムライスほんと美味しいわ〜」 ほっぺをおさえながら笑顔でオムライスを食べ進めているお母さんをみると、ふいにつばきのことを思い出す。 つばきも美味しそうに食べてくれてたな……。 つばきは急にいなくなったぼくのこと心配してる、よね……。 優しいつばきのことだから心配してるってわかっている、わかっているけど勝手なぼくのわがまま……つばきとあの綺麗な女性が一緒にいるところを見たくない。 そんなぼくのわがままで………ばかだよね…。 「どうしたのみけくん?大丈夫?」 スプーンを持ったまま固まっていたぼくの目の前で手を振るお母さん。 我に返り、「大丈夫です」とオムライスを口に頬張る。 自分の部屋に帰ってきたぼくは、窓からみえる海を見つめつつ、外へ出る準備をする。 こんなモヤモヤした日は星空を眺めよう。 民宿を出て歩いてすぐのところにある浜辺の方へと座り込む。 ここは星たちがはっきりとみえて、ひとつひとつ綺麗に輝いている。 あの頃、海辺でみたときと同じように星々は輝いている。 綺麗だなー。 あっ、あれ。 ぼくはつばきと一緒に行ったプラネタリウムで説明されていた、三角形に連なっている星をみつけた。 確か冬の大三角だったよね……。 あの頃からシリウスこの星が一番好きだ。 あのときは星の名前なんてわからなかった。だけど闇の中で一番輝いているこの星が、まるで暗闇の中彷徨っていたぼくに優しく導いてくれるつばきみたいで、この星をみると安心する。 しばらくの間、星空を眺めていたが、少し冷えてきた体に身震いした。 そろそろ戻ろうと立ち上がったぼくは、後ろに人の気配を感じ振り返る。 「────やあみけくん。やっとみつけたよ」 …………なんで…。

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