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「君を探し出すのに時間がかかっちゃったよ。ごめんね。でもみけくんもいきなりいなくなるんだもん」 すらすらと息継ぎもせず一方的に話す、ねちっこくて嫌な声。 3年前にこの人から逃げ出してこの街にやってきたのに……なんで…。 ぼくは恐怖で一歩も動けずにいた。そんなぼくの手を握る紫村さん。 「一緒に行こう。今ならまだ終電間に合うはず」 紫村さんはぼくの腕を引っ張る。 「…………やめて……」 怖い。やだ…。 ぼくは握られている腕を離してもらうため思いっきり上下に腕を振るが、紫村さんの握る力には全然敵わない。 紫村さんに手を引っ張られ、どんどんさっきまでいた浜辺から離れていく……。 紫村さんは駅がある方へと大股でずんずん歩いていく。 まるで一刻も早くこの場から離れようと急いでいるよう……。 どうしたら、この手が離れるだろうか……。 夜、海辺、近所の人も外に出ているわけもなく……。街灯で照らされている道路はぼくと紫村さんしかいない。 「………みけくん?」 俯いてどうすればいいか、ひたすら考えていたぼくは、歩いている方向から名前を呼ばれ紫村さんの後ろから名前を呼んだ相手をみる。 「───芦屋くん!」 「おじさん、みけくんの知り合い……には見えないけど……」 芦屋くんがゆっくりと紫村さんのもとへと近づく。 「君こそみけくんの何かね?もしかして、みけくんあいつ彼氏とかじゃないだろうね!?」 紫村さんは怪訝な表情でこちらを振り向く。 その表情が怖くてぼくは紫村さんから視線を逸らす。 「ふーん。こいつ邪魔だなー」 紫村さんはボソッと呟く。 その声が恐ろしく低い声で恐怖を覚える。 「みけくん帰ろう。明日も朝が早いだろ」 芦屋くんは紫村さんの後ろにいるぼくの手を取ると、紫村さんに「みけくんの腕離してくれませんか」とまっすぐ紫村さんの顔をみる。 「ほんと邪魔だなー」 大きな声で叫んだ紫村さん。ぼくの腕を離し持っていたカバンの中に手を突っ込んでいる。 ぼくは一刻も早く紫村さんから離れようとする。が、紫村さんがカバンから取り出したものが視界に入り足が竦む。 「芦屋くん逃げ……………」 そう言い終わる前に腕を大きく上に翳した紫村さん。思いっきり芦屋くんに向けて鋭く光るものを振り翳す。

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