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「足、鳥肌立ってるし」  丸見えの太ももを指差した男。 「……鳥肌って、これが…?」  小さいブツブツが太もも全体を覆っている。  ずっと見ていると、少し身震いがする。 「ほら、今震えた。やっぱ、寒いんだろ?早く家、帰りな」 「……家はない」  僕の頭をポンポンと撫でている男。 「……触らないで…」  洗ってない髪を他人に触られたくない。  そんな僕のか細い声が聞こえたのか、頭に乗せていた手が離れた。 「なにお前、家ないのか?親は?」 「親なんていない」  僕はこの世には必要ない人間なんだから……  先程まで、眉をひそめ怪訝そうな顔をしていたのに、今は眉を下げ、たれ目の双眸がますます下がっている。 「…俺、これからバイトなんだよな…。とりあえず、これ食えよ」  前半は独り言のように呟き、後半は俺にコンビニの袋を渡しながら言った。 「お前、細えし。これ食え」  袋を受け取らず、訝しげに見ていた僕に、袋の中から紙の袋に入ったものを渡した。 「……なにこれ…」 「肉まんだ。ほら食え」  僕は恐る恐るそれを受け取った。  そんな僕に笑顔を浮かべた男は、立ち上がった。 「じゃ、俺バイトだから、じゃあな」  そのまま僕の元を離れた男。  結局、あの男は何がしたかったんだ。  家に帰れ。と説教し、中途半端な説教でいなくなる。  訳がわからない。  でも、僕の手にある、肉まんは少し温かくて安心した。  たれ目の瞳のあの男の顔がちらついた。  僕は紙の袋から丸い形の中身を取り出し、齧る。 「……美味しい…」  今まで、ひとりでいた僕にこんな優しさをくれた人なんていなかったかもな。  不良が一方的にからかってくることはあったが、こんな説教まがいなことを言って、食べ物を渡してくれた人なんていなかった。  偽善的な優しさだけども、妙にその優しさに胸が温かくなった。  ――12月12日の冬の日のこと。

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