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「うおっ!まだいるのか!」
座っていた僕の後ろから急に声が聞こえ、俯いていた僕は警戒するように後ずさる。
後ずさる際、チラッと男を見るが、立っている男の顔は見えずグレーのチェックのスラックスしか視界には入らなかった。
「――お前、昨日の夜からずっとここにいるのか?」
できるだけ男から離れる。
そんな僕を気にもとめず、ゆっくり近づいてきて、僕の目の前にしゃがみこんだ。
二重の双眸、高い鼻、少し上がりめの口角。健康的な肌。
たれ目なのか、目尻は下に下がっている。
髪色も染めていない、自然な色。
前髪は重めだが、見ただけでわかるさらさら具合。
僕の洗ってない汚くて長い髪とは大違いだ。
いつも絡んできていたような、金髪の不良とは似ても似つかない相貌の男。
普通の男だ。タレ目だから少し優しげな印象の普通のどこにでもいそうな男。
いや。普通ではないか…。
不良みたいな容姿ではないが、パーツパーツが整っているから、こういうのをイケメンというのだろう。
「おーい。聞いてるか?」
男の顔をぼーっと見ていた僕の顔の前に、手をブンブン振った男。
よく聞いてみたら、声は低い声だ。
優しげな印象の男には、少し似合わない声だけど…いい声。
「お前、小さいな…。小学生か?小学生は早く帰れ。親が心配するぞ」
黙ったままの僕が男の少し茶色気味の瞳に映っている。
あ、瞳の色、髪の色と一緒だな…
「…てかお前、冬なのにその格好、寒くねぇか?」
薄い長袖のシャツに、短パン姿の僕に眉をひそめている。
全然、寒さなんて感じない。
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