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灰色生活に最大な優しさを

「今日も綺麗だなぁー」  あの後、男から貰った肉まんをちびちびと食べ終わり、空を見ると星が出てきている。  ただ、ただ、星を眺める。  星を眺めるのが好きだ。  ひとつだけ輝きが強い、あの星の名前は何ていうんだろうか…  学校に行けば、習うのかもしれない。  でも今更、学校に行こうとは思わない。  僕の居場所なんてない学校。教師も僕の存在なんて見て見ぬ振りの無視。  僕が学校に来なければ来ないで、どうでもいい。  中学校は所詮、義務教育だ。  行かなくたって、卒業できる。  来年の3月で卒業。  卒業しても、今みたいな生活を続けるんだろうか…。  仕事したい。仕事して、自分ひとりで暮らせるお金を稼ぐ。  その方法が一番いい、僕だってそうしたい。  でも、小学校も中学校も碌に行っていない僕が…自分の名前もわからない僕が社会にひとりで立つことができるのか――。  名前のない僕を雇ってくれるところなんてない、か。  はぁっとひとつ息を吐く。  その息は白くて、やっぱり外は寒いんだろう。  その寒ささえも感じない僕は、本当に生きてるんだろうか。  僕は徐ろに立ち上がり、打ち寄せる波へと近づく。  真っ暗で先の見えない海の向こう側に行ってみたら、僕の未来もわかるのかな…?  真冬に海に入ったら、寒いのを感じるかな…?  僕はゆっくりゆっくり、海の中へと入っていく――。  身長が低いからあっという間に、水が肩まで浸かる。 「――ちょっ、おいっ!何してんだよ!」  肩まで浸かってる僕の腕を海の中から掴んだ。 「早く出るぞ」  そのまま僕を引っ張り、砂浜まで連れて行く。 「まじで、お前何してんの!?こんな真冬に海に入ったら死ぬだろうが」  俺の腕を握ったまま振り向き、凄い喧騒で怒っている。  自分も全身びしょ濡れなのに、僕を気にかけている男は、先ほど肉まんをくれた男で――。 「はぁ。とりあえず、帰るぞ。このままじゃ風邪引く」  もう一度、僕を引っ張り歩道へ出て、ただ真っ直ぐ歩く。  5分ほど歩いて着いて場所は、7階立てのマンション。  オートロックを開け、エレベーターに乗り4階の部屋へ。  狭い玄関で靴を脱ぎ、まだ靴を脱げていない僕にお構いなしに引っ張り、玄関すぐの浴室へ。  一気にシャワーのお湯を出し、僕の方を見て「服脱いでシャワー浴びろよ」と言った男は浴室から出て行った。

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