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「うんうん。美味い美味い」
男は首を縦に振りながら、笑顔で僕の顔を見る。
今気づいだが、右頬にえくぼができている。
そのえくぼが美形な男を少し可愛くみせている。
「………ありがとう」
小さく呟いた自分の声が思ってたより掠れていた。
べちょべちょの炒飯は、温かくて、誰かと一緒に食べる。
それだけで、美味しく感じる。
夢中で頬張っている僕に優しく笑いかけた男。
「…ほら、喉詰まらせるぞ」
お茶が入ったコップを僕の前に置く。
僕をそのコップに入ってるお茶を全部飲み干した。
「てか、お前、名前なんていうの?」
「………」
名前……
「俺は、卯海椿(うみ つばき)」
「……うみ」
「どっちが名前かわからないような、ややこしい名前だけど…」
右側にできてるえくぼをじっと見る。
「………うみ、うみ、うみ…」
小さく何度も男の名前を呟く。
「――いや、できれば、苗字じゃなくて名前で呼んでほしいんだけど…?」
「……つばき?」
「そう。俺の名前にぴったりだろ?」
にやにやと得意げな顔で笑ってる。
僕はぴったりかどうかなんて分からなくて、首を傾げる。
そんな僕を見た、つばきは目をガーッと見開く。
大きい瞳が、これでもかというぐらい大きくなって、ちょっと恐い。
「椿の花言葉、知らない?」
……花言葉って何だろう…?
「知らないのか。そうか。まぁ気が向いたら調べてみろよ」
「……つばきって花なの…?」
小さな疑問をふと口に出してしまっていた。
「そこからかよ。椿の花見たことないか?」
僕は首を思いっきり振る。
つばきは、「なるほどな…」と小さくつぶやき、ポケットから取り出した黒色の機械を指で操作している。
「………何、それ?」
その黒い機械を指差す。
手のひらに収まるぐらいの大きさのやつを、器用に指で操作しているつばき。
「…?お前、スマホも知らねーのか?」
「……すまほ?」
「まじかよ。今時の小学生ってスマホ知らねーの?でか最近は子供でさえも持ってる時代じゃねーの…」
驚いたように、僕を見ている。
そんな顔でさえも美形な男だと、かっこいい。
てか、僕、小学生じゃないし。
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